国学院久我山(東京)がセンバツ初勝利をおさめた。エースの成田陸投手(3年)が投打に躍動。投げては7安打2失点と粘りの投球で、有田工(佐賀)を抑えた。打っても2本の適時打で2打点の活躍をみせた。昨年11月末にイチロー氏(48=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)に指導を受けたナインは、結果で恩を返した。

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成田は最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、マウンド上で右手を高々と挙げた。1979年(昭54)の初出場から4度目の挑戦。念願の初白星を呼んだ右腕は「久我山の歴史を自分たちの代で変えられたことはうれしい。あくまで一因になれたことがうれしいです」と、謙虚に喜んだ。

身長173センチ、体重80キロ。筋肉質な極太の太ももの持ち主だ。尾崎直輝監督(31)は以前「どっしりしてる。仁王像みたい」と評した。そんな“久我山の仁王”は、この日最速135キロの直球に「特に指の掛かり方が良かった」という決め球のスライダーを徹底的に外角に集め、相手打線の芯を次々と外した。打っても昨秋都大会で4番を務めた強打者は、2本の適時打を放ち「監督が行けというサインを出してくれた。打てなかったら監督のせいにするくらいの気持ちで、思い切ってスイングしてきました」と言い切った。

どっしりのルーツは、私生活の真面目な姿だ。高校では一番前の席で授業を受け、担任でもある尾崎監督を「もう少し気楽に受けてもいいくらい」と真面目な姿勢で驚かせた。小学生の頃からしっかり者で、母親の律子さん(51)によると「放課後に遊ぶ予定があれば『じゃあ登校前に勉強する』と言って、本当にやってから行ってたんです。両立してました」と感心させるほどだった。

大会前にはイチロー氏から「試合見てますよ。アメリカで見てます」とナインにメッセージが送られていた。勝利を受け成田は「イチローさんは自分たちのスタイルをすごくいいものと言ってくれた。とりあえず1勝できたということを素直に報告したいです」と話した。昨秋重点的に指導を受けた走塁は、雨でぬかるんだグラウンドの状況で発揮できなかったという。待望の初戦突破の次は、指導の成果を思う存分に発揮する。【阿部泰斉】

◆成田陸(なりた・りく)2004年(平16)8月15日生まれ、東京都国分寺市出身。小5から小平ライダースで野球を始め、国分寺二中では軟式野球部に所属。国学院久我山には捕手として入部した。最速135キロ。好きなタレントは深田恭子。50メートル6秒5。遠投85メートル。右投げ右打ち。