市和歌山が先輩の小園&松川超えで19年以来3年ぶりの8強を決めた。プロ注目のエース米田天翼投手(3年)が明秀学園日立(茨城)に141球1失点で2戦連続完投。同点の9回、自ら右中間にサヨナラ打を放った。また、星稜(石川)はマーガード真偉輝(まいき)キアン投手(3年)が6回1失点で大垣日大(岐阜)を下した。8強がそろい、28日の準々決勝に挑む。

【ニッカン式スコア】市和歌山-明秀学園日立の詳細速報

エースが打席で燃えた。同点の9回1死一、二塁。米田が打席に入る前、伝令が来た。「この試合はお前が粘ってきた。ここでお前が決めろ!」。半田真一監督(41)のゲキだった。苦戦した猪俣の低め変化球を捉え、前進守備を敷く右中間を割った。141球を投げたあと、自らのバットでサヨナラ勝ちに導いた。

マウンドでは「麟太郎封じの剛腕」の金看板を逆手に取った。この日は変化球主体の配球に徹した。思惑があった。「速球のタイミングで振ってくるのが、分かっていた。速球と思わせてカットボールやツーシームで」。23日の初戦、花巻東(岩手)戦が伏線だ。力勝負で高校通算56本塁打の佐々木麟太郎内野手(2年)を4打数無安打2三振。この日は快速球を想定する相手の裏をかいた。明秀日立の金沢成奉監督(55)も「力で押してくるかと思ったら打たせて取る形」と悔しがる。大砲封じに続いて昨秋の関東王者も倒した。

米田は1学年上で昨年DeNAにドラフト1位入団した小園健太投手(18)と別の道を歩む。昨秋、スタイルをマネしたが空回り。あるとき、舩津直也副部長(29)から動画を見せられた。「身長が低くてもあれだけの球を投げて抑えられる」。167センチの中日山本拓実が躍動する姿だった。目が覚めた。185センチの小園先輩とは違う。175センチの体をどう生かすか。「角度をつけるより、低いところから球がホップして伸びてくる感覚が理想です」。最速149キロ右腕は、自分だけの速球を磨いてきた。

小園とロッテに1位入団した松川虎生(こう)捕手(18)が活躍した昨春を上回るベスト8進出。米田は「去年の先輩を超えられてうれしい」と言った。準優勝した1965年(昭40)以来57年ぶりの4強を目指し、28日は大阪桐蔭と近畿対決。全員野球でV候補に挑む。【酒井俊作】

◆米田天翼(よねだ・つばさ)2005年(平17)2月13日生まれ、大阪・岸和田市出身。中学時代は貝塚シニアに所属し、全日本選手権出場。趣味はウエートトレーニング。好きなプロ野球選手は、オリックス山本、楽天則本。175センチ、81キロ。右投げ右打ち。

○…市和歌山・半田真一監督(米田の配球について)「ストレートをしっかり振ってくる印象。できるだけ的を絞らせないように、いろんな球種を試しながら組み立てろとアドバイスした」

▽市和歌山・松村(捕手で米田をリード)「直球を狙ってきているのは分かっている。小さい動く変化を使ってゴロに打ち取る、芯を外すことを意識しました」

▽市和歌山・寺田(6回左前に同点適時打)「甘い球をしっかり仕留められている。(ロッテ)松川さんの背中を見てずっと野球してきた。少しでも近づける打者になりたい」