06年夏に早実(西東京)で日本一に輝き、昨季引退した元日本ハム斎藤佑樹氏(33)が見た甲子園。第3回は大阪桐蔭のチーム力とともに、近江・山田の降板シーンに着目した。

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大阪桐蔭は1つ1つのプレーが丁寧で、隙がない。最後まで攻撃の手を緩めない姿は、さすがだと思いました。プロのチームとの対戦も、見てみたいと思えるぐらいの勝ち方でした。

決勝で印象に残ったのは、近江の山田投手が自分で交代の合図を送ったシーン。申告できる雰囲気のチームなんだなと感じました。早実も言える環境でしたが、僕にその経験はありません。先日も多賀監督のテレビインタビューを見ましたが、とても愛のある優しい方なんだろうなと思いました。

僕もセンバツに出た時、関西戦で延長再試合を投げて、翌日の横浜戦で打ち込まれました(計6回6失点)。まさに今日の山田投手のような経験をしました。

体の張り、疲れはもちろんありました。でもそれ以上に、自分の力のなさを感じました。高校野球には全力投球をしなくていい場面って確実にあるんです。僕の場合、プロ野球はすべて全力投球が必要だと思いましたけど、高校野球はそうじゃない場面がどこかにある。力の入れ具合を変えたり、体力をつけて、技術を上げることで、7割、8割ぐらいの力で投げるすべが身に付きます。

センバツで負けた時に、夏はその要素がないと勝てないと痛感しました。山田投手も疲れの中で、上手にカットボールやツーシームを両サイドに投げ分けてました。夏に向けて、彼の進化がすごく楽しみです。

今大会でも注目されましたが、今は球数制限があります。僕自身、高校時代に将来けがをするかもしれないと思って、試合に臨んだことはありませんでした。ただ目に見えないダメージ、自分が感じてないダメージはきっと体に負っているはず。周りの大人の方が制御してあげることも、すごく大事なことなんじゃないかなと思います。

このルールは、現代の野球選手に与えられた使命だと思います。ルールがある以上、ピッチャーとしては自分の仕事をまっとうするしかない。ルールの中で勝つことが、選手にとっては、多くのことを吸収できる、勉強できることにつながるはずです。チーム力がより大事になってくるんだろうなと。

夏の甲子園に向けて、本気で大阪桐蔭に勝ちたいと思うチームの取り組みを見てみたいです。僕の時は自分たちが甲子園に出ることで精いっぱいでした。今日の試合を見ても、相当投打のかみ合ったチームをつくらないと難しい。そこに向かって冷静に、時にはがむしゃらになってプレーする姿を見たいです。

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