関西学院(兵庫)の広岡正信監督(68=同校アンバサダー)が今夏限りで勇退することが5日、分かった。前日4日に部員に伝えた。

報徳学園時代は89年春、関西学院では98年春、09年夏に甲子園出場。約36年間の高校監督生活に区切りをつけ、今秋以降は総監督として後方支援する。「まだまだ頑張りたい気持ちもありますが、若い世代にバトンを託したい」。後任には同校野球部OBで長男の広岡直太部長(44)が就く。

自身も関西学院OB。関学大を経て大手銀行に勤めた後、報徳学園中の軟式野球部監督を7年間務め、近畿大会を制するなど実績を残した。86年からの3年半は報徳学園高の硬式野球部で采配を振り、大阪桐蔭の西谷浩一監督(52)も指導。89年春のセンバツでは吉岡雄二を擁するV候補の帝京を1回戦で破った。

90年からは関西学院の監督に就任。文武両道を掲げながら、戦前に2度の全国制覇を誇る古豪の復活に尽力した。他の強豪校ほど有力選手を集められないチーム事情も踏まえ、常時100人を超える部員と「全員野球」を徹底。98年のセンバツに戦後初、63年ぶりの甲子園に導いた。

09年には夏史上最長ブランクとなる70年ぶりの甲子園出場を果たし、1回戦の酒田南戦で70年ぶりの勝利を記録。正捕手の山崎裕貴に急造リリーバーを任せる奇策を成功させ、2回戦では堂林翔太(現広島)を擁して優勝した中京大中京と9回サヨナラ負けの激闘を演じた。

元プロ野球選手を父に持つ部員も多く指導。近年では元阪神八木裕氏、元オリックス弓岡敬二郎氏、元近鉄、オリックスの水口栄二氏、米大リーグや阪神、楽天で活躍した藪恵壹氏らのジュニアと聖地を目指した。阪神北川博敏1軍打撃コーチの長女・千尋マネジャーが3年生だった昨夏は兵庫準Vと躍進した。

今夏は広島、阪神で活躍した新井貴浩氏の長男・亮規浩(あきひろ)内野手(3年)らと13年ぶりの聖地を目指す。「最後だからとかは考えず、いつも通り関学らしい野球ができればと思っています」。泰然自若で最後の夏に臨む。【佐井陽介】