聖光学院(福島1位)が土壇場力を発揮し、4年ぶり4度目の春の東北王者に輝いた。

準々決勝から3試合連続で逆転。7回に打者一巡の猛攻で一気に3点ビハインドをはね返し、東北(宮城2位)に4-3で競り勝った。三好元気外野手(2年)が起死回生の同点打を放つと、続く5番山浅龍之介捕手(3年)が勝ち越し打。夏の県大会(7月9日開幕)に向けて弾みをつけた。

   ◇   ◇   ◇

聖光学院がドラマチックに頂点に立った。秋田商(秋田1位)との準々決勝から逆転、逆転、逆転。窮地に立たされて力を発揮した。殊勲打の山浅は「秋が準優勝で終わっていますし、春の東北大会で優勝できてすごくうれしいです。チームとしてやりきれたと思います」。昨秋の東北大会決勝は花巻東(岩手)に1-4、今春のセンバツは2回戦で近江(滋賀)に2-7で敗れた。日々の練習から「苦しい状況で自分たちの力を出せるか」を追求。最高の結果につなげた。

押せ押せムードに乗った。3-3の7回2死二塁。山浅は真っすぐを待っていた。カウント1-1から外角直球を中前へ運ぶと、一塁ベース上でド派手にガッツポーズ。「とにかくうれしかったです。あの回は僕だけではなく、みんながつないで逆転できた。無心で振るだけでした」。気持ちで決勝点をもぎ取った。

夏の前哨戦ではない。夏と同じ気持ちだ。斎藤智也監督(59)は「負けて泣くのは誰でもできる。勝って、感動して、自分たちがやりきって、最後に泣けるような野球をやりたい」と選手を鼓舞。それを象徴するシーンが準々決勝であった。サヨナラ打を放った安田淳平外野手(3年)は直後に号泣。弘前学院聖愛(青森2位)との準決勝、決勝も逆転勝ち。指揮官は「ギリギリの場面で勝利をものにした粘り腰は選手の財産になる」とうなずいた。

3年生の頼もしさも優勝の一因だ。前日の準決勝、先発の小松桜吏(おうり)投手(2年)は初回先頭から2者連続四球。1アウトも奪えずに降板した。決勝は別の投手が先発予定も、赤堀颯主将(3年)を中心に「小松を先発でお願いします」と斎藤監督に直訴。仮に打ち込まれたとしても「何点でも取り返します」と援護を誓った。小松は4回2/3を3失点(自責1)と粘投。打線は有言実行で相手よりも多く得点した。

甲子園をかけた戦いまで1カ月を切った。「日本一を目標に掲げている以上、今よりも新しいチームをつくっていきたいです」と山浅。全国制覇という「最終回」に向けて聖光学院の夏物語が、まもなく幕を開ける。【山田愛斗】