春季県大会ベスト4で第4シードの中越を最速143キロの本格派右腕、小幡拳志郎投手(3年)がけん引する。名前の由来は人気漫画「北斗の拳」の主人公「ケンシロウ」。ヒーローと同様の真っ向勝負で、チームを18年以来12度目の甲子園に導く。中越は初戦2回戦(12日)、正徳館・栃尾-見附の勝者と対戦する。

「中越の背番号1は、どこよりも責任がある」。小幡はケンシロウに負けない強い意志でマウンドに立つ。「北斗の拳」の大ファンの父直樹さん(48)から主人公と同じ名前を授かった。小学生のころは親子で毎晩アニメを見た。ただ、実は「僕の好きなキャラはラオウです」。ケンシロウの兄で最大のライバル。全身に闘志をみなぎらせる姿は試合に向かうテンションを高めてくれる。

武器は最速143キロの直球。春季県大会の準々決勝では昨秋県王者の北越に3-2で完投勝ちした。被安打8も自責点は0。「接戦で勝ち切れたのが良かった」。冬場からフォームにタメをつくり、体の開きをなくすことを意識してきた。修正の成果を感じた投球だった。

6月の強化期間に30メートルダッシュを20本などの走り込みでスタミナをつけた。力感あふれるフォームで投球ごとに帽子が飛ぶ姿が代名詞だったが、今は「集中するために直した」。春季県大会後、伸ばしていた髪を切り、帽子をフィットさせた。

ミーティングでは積極的に発言し、練習中も声を出す。以前は吉井愛斗主将(3年)らの陰に隠れがちだったが「自分がやらなければと思った」。昨秋の新チーム発足時に初めて背番号1をつけた。重かったが励みになった。自身を変えようと決意した。本田仁哉監督(45)は「エースの自覚がマウンドに出ている」と成長を確信する。

好きな言葉はラオウが絶命する寸前に残した「わが生涯に一片の悔いなし」。最後の夏、たどり着きたい思いは「わが高校野球人生に一片の悔いなし」。最高の充実感を得るために甲子園切符を手にする。【斎藤慎一郎】

◆小幡拳志郎(おばた・けんしろう)2004年(平16)9月1日生まれ、魚沼市出身。小出小2年から野球を始めて、投手になったのは5年生の時から。小出中3年時は県大会でベスト8。中越では1年の秋からベンチ入りし、2年の秋に背番号1をつける。好きなプロ野球選手は、ソフトバンクの千賀滉大投手。182センチ、85キロ。右投げ右打ち。

◆北斗の拳 週刊少年ジャンプで83年から88年に連載し、84年にアニメ化された格闘漫画。核戦争後の荒廃した世界を舞台に一子相伝の「北斗神拳」の伝承者ケンシロウがさまざまな相手と戦いを繰り広げる。北斗神拳の伝承者候補だったラオウ、トキ、対峙(たいじ)する南斗聖拳の使い手など個性的なキャラクターが登場し人気を博した。