<高校野球東東京大会:二松学舎大付17-0文京>◇24日◇準々決勝◇神宮球場

手首の痛みなんて、気にならなかった。文京(東東京)植田英備(ひでのぶ)外野手(3年)は、右手を白い布でつり、左手には紫色のメガホンを持って、ベンチから声を出し続けた。準々決勝は5回コールド負けも、同校史上初の8強入りを果たし「チームメートに感謝です。自慢の仲間。誇らしく思います」。

「6番左翼」でスタメン出場。8点を先制され、なお1回2死二塁で、左翼フェンス際に打球が飛んできた。目で白球を追うのが精いっぱい。無我夢中で左手のグラブに収めたが、そのままフェンスに激突。右手首付近をひねった。球場内の医療関係者に応急措置を受け「病院に行った方がいい。たぶん(骨が)折れている」と言われたが断った。じんじんする痛みだったが「最後までベンチに残りたいです」。主将の役目を果たしたかった。

試合後、相手の校歌が流れると、涙があふれてきた。小学生から始めた野球人生。「高校で終止符を打つ」と決めていた。大学では、挑戦してみたいことがある。アメリカンフットボールだ。その前に、まずは受験。右利きなのに、右手を痛めてしまったが「文武両道で勉強も頑張ります」と前を向いた。【保坂恭子】