史上7校目の夏連覇を目指した智弁和歌山の挑戦が、初戦で終わった。国学院栃木の4人の継投に対応しきれず、18年以来の初戦敗退。しんがり登場からの初優勝も果たせなかった。

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智弁和歌山大応援団の祈りのような「ジョックロック」が、甲子園に響いた。9回、魔曲が反撃開始を告げる。ベンチもアルプスも一体で2点を追う中、先頭の1番山口が左翼への二塁打で出塁した。

2年夏、和歌山大会準々決勝翌日の練習で右肘を骨折。全国制覇はスタンドから見守った。2年分の思いも込め、反撃機を作った。だが続く3人が、3連続飛球。最後の打者になった4番岡西は「終わったなというか、まだまだ足りないところだらけだなと思いました」と主将は天を仰いだ。

相手の継投に、王者が対応しきれなかった。先発と予想したエース盛永は、6回から4番手で登板。渡部は2安打も「データがない投手に対して対応が遅かった」と悔やみ、無安打の岡西は「1巡で目先を変えられる。やりにくいチームだった」と肩を落とした。

「短いイニングで登板するのは非常に難しい部分もあるが、それもなんなくというか、技術もメンタルも向かってきている強さを感じました」。就任後初めて初戦敗退を喫した中谷仁監督(43)も、脱帽した。

自軍も継投で春の近畿王者になった。本格派の武元を最後に置き、4人の継投で大阪桐蔭を倒した。だがこの日は先発の武元が初回に失点し、塩路との交代を迷いながら続投させた6回に逆転を許した。「状態を上げられなかった」と監督が悔やむ塩路も、1発を浴びた。全員が束になる戦法に、この日はやられた。

25年前の夏。中谷主将率いる智弁和歌山は、前年夏の初戦敗退の涙を全国制覇の歓喜に変えた。今夏の無念を力に変え、必ず王座に返り咲く。【堀まどか】

▽智弁和歌山・武元一輝投手(3年=今大会出場投手最速タイの148キロをマークも6回途中4失点)「やるべきことはやってきたけど、まだ甘い部分があり、そこがこの試合に出てしまったのかなと。最終的な夢はプロ。活躍するために、どういう進路が最善かを考えて、話し合いながら決めていきます」

▽智弁和歌山・塩路柊季投手(3年=逆転された直後の6回に救援も8回に被弾)「悔しいだけです。もっとテンポよく投げていたら、味方がいい攻撃に入れていた」

◆しんがり登場校敗退 49代表最後の登場となった智弁和歌山が初戦敗退。49代表制になった78年以降、組み合わせ抽選時に相手が決まらない「しんがり登場校」は通算11勝32敗1分けと分が悪い。過去に勝った11校も10校は3回戦で敗れており、8強以上は06年鹿児島工(4強)だけだ。

◆連覇ならず 智弁和歌山は04、05年駒大苫小牧以来の夏連覇を逃した。前年優勝校の出場は39度目で、初戦敗退は17年作新学院以来13度目。