第95回記念選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の選考委員会が27日に大阪府で行われ、出場36校が決定した。昨秋の東海大会で準優勝した常葉大菊川が、2013年以来10年ぶり5度目となるセンバツ切符を獲得。ナインは喜びをかみしめながら、約1カ月半後の本番に向けて決意を新たにした。また、同大会4強の加藤学園は選出されなかった。

雪交じりの冷たい雨が降り注いだこの日、常葉大菊川に一足早い春が訪れた。午後4時過ぎ。同校の室内練習場で待機していたナインに歓喜の瞬間が訪れる。中沢俊一校長から、センバツ出場決定が告げられた。平出奏翔主将(2年)が「今までの野球人生の中で一番うれしい」と声を弾ませると、悪天候とは対照的な笑顔がチームに広がった。

恩返しを誓う。日本ハムドラフト4位の安西叶翔(3年)ら豊富な投手陣を擁し、優勝候補に挙げられた昨夏。コロナ禍で大量に主力を欠き、4回戦で敗れた。迎えた秋。最後の夏を無念の形で終えた3年生が、部活動引退後も練習に参加。打撃投手などを務め、新チームを支えた。平出は「今日、良い報告はできたと思う。ただ、甲子園で勝ってこそ恩返しになる。まだここからです」と力を込めた。“2季分の思い”を背負って甲子園に挑む。

届いた吉報に、石岡諒哉監督(33)も表情を引き締めた。常葉大菊川の正捕手として、07年センバツで日本一を経験。20年の就任から3年、今度は指導者として聖地への挑戦権を得た。「個人的な特別な感情はない」と話した若き指揮官は「甲子園でも自分たちの野球ができる準備が、勝つために大事になる。『出て終わり』にならないように、全ての面で底上げしたい」。自身の経験を伝え、さらなる強化を図る。

3月18日の開幕まで約1カ月半。攻守の要・鈴木叶捕手(2年)は「出るからには、勝ちにこだわって一戦必勝で優勝を狙いたい。そのために、もう1段階レベルアップして臨みたい」。平出も「一丸となって、練習の質を上げなければいけない」と結んだ。出場がゴールではない。目指すべき場所をイメージしながら、冬の鍛錬を続ける。【前田和哉】