初甲子園の21世紀枠・城東(徳島)が東京王者の東海大菅生に大奮闘した。序盤に2度リードを奪い、接戦に持ち込んだ。史上初めてノッカーを務めた女子マネジャーを含め、部員13人の力を結集した。

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大歓声は試合前から起こった。ユニホーム姿にバッティング手袋を装着し、ノックバットを持った女子マネジャーの永野悠菜さん(3年)が入った。約1分間、内野ノックを担当。終了すると、場内からは大きな拍手が湧き起こった。

「緊張はあったんですけど、ノック前に選手が落ち着かせてくれたので安心して入れた。今日のノックは100点ではないんですけど、楽しかったので満足。これだけ多くの方が見てくださっている前で、堂々と立てたのは良かった。やってきて良かった」

中学時代はオーケストラ部だった女子高生が、聖地でバットを握った。甲子園史上初の女子ノッカーが誕生した瞬間だった。

21世紀枠校が東京王者に食らいついた。初回、内野ゴロの間に先制。三塁走者で生還した吉田優内野手(3年)は「まさか先制のホームを踏めるとは。うれしかった」と城東初得点に興奮気味だ。同点の2回には死球と犠打に暴投を絡め、1死一、三塁から9番長谷鴻志郎内野手(2年)のスクイズで勝ち越した。

青色に染まったアルプスも一丸だった。徳島からバス35台を使い、全校生徒で応援。卒業生も多く詰めかけ、得点が入ると阿波おどりで盛り上がった。

新治良佑監督(35)は逆転負けにも前を向いた。「現状の100%の力は出せた。選手たちも負けて悔しさはあるが、『本当に楽しかった。もう1度夏に来たい』と言ってくれた。非常にいい経験になった」。聖地で、公立の進学校が心1つに戦い抜いた。【林亮佑】

◆女子部員と甲子園 日本高野連が定める大会参加者資格規定には「その学校に在学する男子生徒」と記され、女子は公式戦に出られない。甲子園の練習参加もそれに準じていた。16年夏の甲子園練習で大分の女子マネがボール渡しを止められたことで規則が広く知られ、緩和が進むきっかけに。昨夏からノック補助と試合中のボールパーソン活動が認められ、今大会からノックも可能に。いずれも危険防止の観点から「普段、活動している範囲内で」とされている。