21世紀枠で出場の氷見(富山)には、不思議な縁で出会った頼れるコーチがいる。阪神などでプレーした山川猛氏(68)が昨秋から指導にあたっている。

同氏は現役引退後に長年、阪神で編成担当を務めた。20年、義母の介護のため生まれ育った関西を離れ、夫人の実家がある氷見市に移住。小中学生に野球を教える縁で、氷見の野球部と関わることになった。そのタイミングが絶妙だった。

氷見が昨秋の県大会で優勝した直後の同9月末からチームに合流。勝負の北信越大会までわずか数日だったが、技術面・精神面で助言した。氷見は初戦の遊学館(福井)戦で延長12回、1-0サヨナラの大熱戦を演じた。この試合がなければ21世紀枠での選出はなかった可能性がある。

山川氏は捕手出身。主将の大沢祥吾捕手(3年)は「打撃もキャッチング技術も冬の間に上がりました。冗談も言ってくれて、いい雰囲気にしてくれます」と感謝している。

もう1つ、大きなメリットがあった。山川氏は17年から3年間、阪神園芸に勤務した。冬季に毎日使う室内のブルペンを「神整備」。少し荒れていた土質や傾斜を整えた。グラウンドに関しては、阪神園芸の元同僚に、電話などで相談することもある。前日、初戦が雨天中止になると、甲子園での室内練習で再会。旧交を温めながら、整備に関する意見も交換した。

今回は14日に大阪入りしたチームに同行している。当初は戸惑いもあったという富山生活にもすっかり慣れ、氷見野球部に欠かせない戦力になった。

「まだまだですけど、すごくいいチームになってきましたよ。選手の成長を見られるのは楽しいです。自分も一緒に成長していきたいですね」と言い、山川氏は笑みを浮かべていた。【柏原誠】