センバツ8強が出そろった。東海大菅生(東京)は最速150キロ右腕のエース日当(ひなた)直喜投手(3年)が119球、7奪三振で沖縄尚学に完封勝利。

器用な指先を持ち、多彩な変化球で相手打線を翻弄(ほんろう)。21年春以来2年ぶりに準々決勝進出を決めた。連覇を狙う大阪桐蔭は、スクイズで挙げた1点を守り抜いて能代松陽(秋田)に勝利。報徳学園(兵庫)は東邦(愛知)とのタイブレークを制した。昨夏優勝の仙台育英(宮城)は龍谷大平安(京都)に快勝した。

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自信を持って、日当は腕を振った。沖縄尚学の応援を口ずさみ、リズムに乗った。9回2死一、二塁、134キロフォークで空振り三振に仕留めると、力のこもったガッツポーズが飛び出した。119球で完封。野手の3失策もあったが「仲間のエラーは自分の責任。仲間のミスをカバーできてこそのエース」と力強い。

靴のサイズは31センチ。190センチ、105キロのフィジカルに、繊細な指先を併せ持つ。変化球はフォーク、スライダー(スラーブ)、シンカー、カットボールをそれぞれ少しずつ握りを変えて計16種類。この日キレのあったフォークだけで落差、曲がりなどアレンジをした7種類を操る。

初回1死、相手の打球に思わず右手を伸ばし、打球が指先に直撃。アクシデントにも「こんなんで負けてたまるかと思って。アドレナリンが出ていて痛くなかった」と投げ続けた。その指先はとても器用。ユニホームが破れたら自分で縫い、背番号を縫いつけていたことも。「家庭科が好きで、お裁縫が好きです」。中3で作ったクッションを、高校の寮でもベットの枕元に置いて愛用する。指の関節もやわらかく、ボールをしっかりと深く挟める。

準々決勝は大阪桐蔭が相手。両校の甲子園での対戦は21年夏の初戦、8回途中降雨コールド(4-7)で敗れて以来だ。開会式で仲良くなった沖縄尚学・知花からは試合後に「大阪桐蔭に負けるなよ」と声をかけられた。「かっこいい姿で腕振って投げて、チームに勝ちを引きつけるよ」と約束。舞台は整った。【保坂恭子】

○…沖縄・石垣島出身の大舛が、決勝点のホームを踏んだ。4回に先頭打者で左前安打を放ち、すかさず盗塁。三塁まで進み、新井の犠飛で生還した。17年夏の甲子園4強入りした同校を見て、進学を決意。地元を離れた。「菅生に入学する時から、沖縄の高校と甲子園でやるのかなと思っていた。こういう日がきて、勝つのは奇跡。信じられない」と喜んだ。

◆大型投手の完封 東海大菅生・日当は190センチ。80年以降、190センチ以上の大型投手による完封は86年夏の川辺忠義(秋田工=192センチ)が日南戦、ダルビッシュ有(東北=195センチ)が03、04年に計4試合、12年夏の藤浪晋太郎(大阪桐蔭=197センチ)が計2試合、18年夏の渡辺勇太朗(浦和学院=190センチ)が二松学舎大付戦で記録している。

◆1-0完封投手 センバツでスコア1-0の完封勝利投手は、21年の小園健太(市和歌山商)が県岐阜商でマークして以来。東京のチームでは12年の中村祐太(関東第一)が別府青山戦で記録して以来となる。

◆関東・東京4校が8強 東海大菅生が勝利。関東・東京の4校が8強入りしたのは、12年の4校(高崎健康福祉大高崎、浦和学院、関東第一、横浜)以来。

◆連続1-0 センバツでスコア1-0が同日に2試合続いたのは、08年3月26日の○華陵-●慶応、○沖縄尚学-●聖光学院以来15年ぶり。この時は2試合とも1回表の1点を守る「スミ1」完封だった。

◆スコア1-0 センバツ史上で見ると最も多いスコア。1-0は大会通算154度目となり、最多の3-2と並んだ。次いで2-1が152度ある。

【センバツ】8強出揃う 大阪桐蔭、仙台育英、報徳学園、東海大菅生がベスト8/スコア詳細