高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。
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<高校野球栃木大会:真岡工6-2真岡北陵>◇7日◇1回戦◇栃木県総合運動公園野球場
真岡北陵の主将を務める黒木琉来(りゅうく)内野手(3年)は、その時を待っていた。4点を追う9回裏2死一、二塁。相手のマウンドにいる真岡工の背番号1は、中学まで同じチームでプレーし、今でも親交の深い増川一颯(いぶき)投手(3年)だ。
5回途中から登板していた増川とは、この日2度目の対戦。7回の最初の勝負は「ストレートを狙ってたけど球が速かった」と投ゴロだった。「絶対打つ」と気合が入った9回。だが次の瞬間、二塁走者がけん制死。試合が終了し、2人の最後の対決は白黒がつかなかった。
予想外の幕切れとなったが、「やりきった」と黒木に涙はない。この日の宇都宮市は最高気温35度。両軍計6人が熱中症の症状を訴え、黒木も2度、足をつった。それでも「自分が退くつもりはない」と最後までプレーを続けた。
高校野球生活が終わった黒木は「お互い引退したら、いつもの焼き肉屋で増川と今日の思い出話を」と笑顔を見せる。増川も「もちろん」と笑顔で応える。2人の最後の勝負は1分ほど。だが真っ向勝負の思い出は宝物となった。【黒須亮】

