岩手大会では一関一が波乱を起こした。ノーシードながら甲子園常連校の盛岡大付に3-0で勝利。菅原春紀投手(3年)が138球の熱投で公式戦初完封を飾った。

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一関一・菅原が公式戦初完封を盛岡大付相手に決め、笑顔で右拳を握った。3点リードの9回2死一塁、最後は高め直球で空振り三振。「組み合わせが決まった時から強い相手とやるのは分かっていた。苦しいところで最後は三振で乗り越えられて良かった」。初回、いきなり連打を浴びるなど1死満塁のピンチ。それでも「ここで抑えれば流れが来る」と切り替え、後続を空振り三振と左飛で先制点を与えなかった。

相手打線はスタメン9人中7人が左打者。130キロ前後の直球を軸に左対策でチェンジアップを多投した。「うまくはまった」とうなずき、部員31人の一関一が同126人の強豪校をのみ込む原動力になった。

グラウンドに立てなかった仲間の思いを背負い、1球に魂を込めた。背番号「9」で右翼レギュラーの永沢快斗外野手(3年)が体調不良のため、大会直前に入院。メンバー変更はせず、チャンスやピンチでは一関一ベンチで永沢のユニホームが掲げられた。菅原は「一番練習してきた選手。『しっかり勝てたぞ』というのと、『待ってるぞ』と伝えたい」と力を込めた。

盛岡三から4月に着任した千葉勝英監督(49)にとっては一関一での夏1勝だ。「試合に勝って泣いたことはなかったですが、泣けてきました。全校応援を組んでもらい、ありがたかった」。生徒約580人の応援の後押しも力に変えた。12日の2回戦では同じ一関地区の大東と対戦する。「この投球に満足せず、次もいい投球をしたい」と菅原。「甲子園で校歌を」という目標に向け、しぶとく勝ち続ける。【山田愛斗】

○…盛岡大付 夏の甲子園に11度出場の名門が、00年以来23年ぶりとなる初戦敗退を喫した。初回1死満塁、8回2死二、三塁などチャンスをつくりながらも、散発5安打で無得点。左腕3投手の継投で計3失点と踏ん張ったが、打線が活発な「強打のモリフ」を示せなかった。目指していたのは2年ぶりの優勝。主将の諏訪大成外野手(3年)は「もっとやれた」と後悔の言葉を口にした。早すぎる夏の終わりに「『自分たちがやってやるぞ』という思いだったが、言葉にできないぐらい悔しい」と涙を流した。

○…花巻北 宮古商工を6-4で下し、4年ぶりに初戦を突破した。1点リードの6回2死一、二塁、高橋愛叶夢(あとむ)内野手(2年)の好走塁が光った。相手の暴投で二塁からヘッドスライディングで生還。フルカウントのためスタートを切っており、一気に本塁を陥れた。高橋愛は「とにかく(先発・小原)慶人さんが頑張ってくれたので、どうにか自分が返り、追加点で助けてあげたいという思いだった」と貴重な1点をもたらした。