麟太郎の最後の夏が開幕した。高校歴代最多の通算140本塁打を誇るプロ注目スラッガー、花巻東(岩手)・佐々木麟太郎内野手(3年)が今夏初安打を放った。

初戦の盛岡市立戦に「3番一塁」で出場。日米10球団が視察に訪れた中、4打数1安打1四球でチームの7回コールド勝ちに貢献した。同校4年ぶりの甲子園出場を目指し、次戦は16日の3回戦で水沢商と対戦する。

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日米10球団のスカウトが熱視線を送る中、佐々木麟に今夏初安打が生まれた。4-1の3回先頭、2ストライクと追い込まれながらも130キロ直球を捉え、痛烈な打球を中前にはじき返しチャンスメーク。この一打を起点に2点を挙げた。周囲は1発を期待するが、佐々木洋監督(47)は「今大会は本塁打とか記録はどうでもいい、(本塁打を)打たなくてもいいとも言っている。とにかくチームに貢献するバッティングをしてほしい」。その言葉どおりに追加点を呼び込んだ。

メジャーでもトップクラスの打球速度で本塁打を量産するOBのエンゼルス大谷翔平投手から学び、鋭い打球を飛ばせるようになってきた。佐々木麟は「1回気になると調べたくなるタイプ」と、大谷の動画を何度もチェックするのが日課だ。先輩のスイングを見てイメージを膨らませ、ウエートトレーニングにも注力。ネットで記事を検索し、コメントから打撃の思考なども学んでいる。

「去年よりも確実にバットスピードも打球速度も上がっている」。今までスタンドインが少なかったライナー系の打球でも本塁打になることが増えた。偉大な先輩について「1歩でも近づけたらうれしいと思って、日々練習している。バッティングを含めて参考になることだらけ」と言う。

高校通算本塁打は6月下旬以降さらに積み上げ、140本として大会を迎えた。今大会初戦は長打がなかったが、視察した西武渡辺GMは「何よりもバットを振れている。遠くに飛ばせるところが一番の魅力だと思う」と評価。ヤクルト斉藤スカウトは「打球を飛ばせるのは持って生まれた能力で、誰でも飛ばせるわけではない。あれだけ飛ばせる選手は大学、社会人を含めていない」と話した。

佐々木麟は5月中旬の沖縄遠征中に背中の違和感を覚え、春季岩手大会の2試合を欠場した。試合後、報道対応がなかった本人に代わり、佐々木監督は今大会直前にも背中に違和感があったことを明かし、「まだちょっと本来の調子ではない」と説明。自身初となる夏の甲子園出場に向けて、花巻東のスラッガーは焦らず前に進む。【山田愛斗】