履正社が苦い歴史を力に変えた。昨夏は8回、昨秋は9回を0点に抑えられた前田から3点を奪った。2回に先頭西田大志外野手(3年)の中前打をきっかけに相手失策で1点。4回は2安打と死球で得た2死満塁から野上隼人捕手(3年)の左前打で2点。難攻不落の左腕を追い込んだ。

野上が打ったのは浮いてきたチェンジアップ。履正社の決めごとは<1>狙う球種を決める<2>高めの直球を捨てる<3>低い変化球を捨てる。一朝一夕ではできない。能力の高い打者が、日頃の練習から「前田対策」として本気で取り組んできた。多田監督がコーチ時代の19年春の甲子園で星稜・奥川(現ヤクルト)に完封負け。打倒奥川を掲げてスライダーの見極めを猛特訓し、夏にリベンジした。多田監督は現メンバーにも19年当時の取り組みと、選手の意識の高さを繰り返し伝えてきた。あの年と、たどった道のりは似ている。

苦い経験と向き合う毎日は自信に変わっていく。アレルギーのように大阪桐蔭に負けてきたが、今回は明らかに空気が違った。「今までは『桐蔭や』という気持ちで戦っていたけど今日は何というか…堂々としていましたね。『桐蔭や』という感じがしなかったんです」。多田監督はそれこそが最大の勝因とでも言うように胸を張った。【柏原誠】

▽履正社・野上(4回2死満塁からリードを広げる2点適時打)「バッティングに力がないので、ワンヒットを打つことをこの夏に心がけてきた。自分らしいバッティングがチャンスでできたのが一番うれしかった」

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