<高校野球大阪大会:履正社3-0大阪桐蔭〉◇30日◇決勝◇大阪シティ信用金庫スタジアム

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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「日本一のバッテリーになる」。その夢がかなわず、南川幸輝捕手(3年)の目には涙があふれた。

エース前田とは、小学6年時にオリックスジュニアでバッテリーを組んでいた。その頃、現中日の根尾昂らが活躍する姿に憧れ「一緒に大阪桐蔭にいけたらいいね」と語り合った。中学時代は別のチームでプレー。高校入学後、3年ぶりに受けた球の衝撃は忘れられない。「直球の質、制球力、チェンジアップ、すべてが想像以上だった」。その感触どおり前田は1年秋から活躍。だがその女房役は1学年上の現DeNA松尾汐恩だった。「松尾さんのまねだけしても超えられない」。自身の長所である打撃や、強肩、冷静さに磨きをかけ、2年秋からは「4番捕手」で先発。西谷浩一監督(53)も「しぶとい良い選手になってくれた」と成長をたたえた。

最後の夏に向け野手陣は「前田に頼っていてはいけない」と打撃向上を目指したが、この日はわずか3安打で完封負け。「前田を助けられずに終わってしまって悔しい」。それが南川の涙の理由だった。

高校最後の夏は終わったが、2人の野球人生はまだまだ続く。「決して100点ではないけど、前半よりも後半の方がよかった。次につながる投球だと思う」。南川は世代NO・1左腕へ熱いエールを送った。【村松万里子】

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