日大三(西東京)のエース安田虎汰郎(こたろう)投手(3年)が“伊勢エビチェンジアップ”で社(兵庫)打線を2安打に抑えた。9回を106球で、公式戦初の完封勝利。今大会の完封投手第1号となった。今年4月に就任した三木有造監督(49)は甲子園初勝利を挙げた。

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今大会初の完封勝利を挙げた安田は「ヒットは3本ですか? あ、2本だったんですか」。全く意識をせずに、公式戦初の完封を達成。9回は足も手の指もつっていたが、気持ちで投げ切った。「公式戦初めての完封が甲子園でできてうれしい。(人生で)一番よかったピッチングだと思います」と笑顔だった。

この日初めて二塁に走者を置いた7回。2死二塁として迎えた6番打者に対し、カウント2-2からの7球目、外角低め112キロのチェンジアップで空振り三振を奪った。操るのは、打者の手元で沈む魔球“伊勢エビチェンジアップ”だ。関節が柔らかく、さらに右手の薬指第二関節が大きく内側に曲がるのが特徴で「生まれつきです。だからチェンジアップが得意。これが秘訣(ひけつ)なんです」と明かす。

さらに磨きがかかったのは、今年1月。11年夏の甲子園優勝投手の同高OB吉永健太朗さん(29)にシンカーの握り方や腕の振りを直接教えてもらった。安田のチェンジアップの握りはシンカーと全く同じ、中指と薬指の間で挟む。西東京大会を制した後には、吉永さんから「自信を持ってシンカーと言ってこい」と連絡があった。しかし、本人は「恐れ多いです。次元が違う。僕のはまだ完成していないので」と謙虚に話す。

出身は、千葉県鴨川市の漁師町。小学2年の頃から船に乗り、伊勢エビ漁師の祖父・正二さんを手伝っていた。今は寮生活だが、実家に帰った際には朝4時起きで手伝う。「握力は(漁で使う)網で鍛えられたと思います。泳ぎは苦手だったんですが、海で泳いで克服しました」。

子ども時代のお手伝いから、聖地での勝利へ。魔球とともに、11年以来の全国制覇へ駆け上がる。【保坂恭子】

▽日大三・二宮主将(3安打1打点の活躍)「安田が完璧に抑えてくれていたのでヒットで援護しないといけないと思った。甲子園は緊張をしなかった。楽しんで打席に入れた」

▽日大三・大賀(先発マスクで安田とコンビを組み)「低めに変化球を投げさせ、インコースでストライクをとっていった。腕を振って三振、フライアウトを取れたのがよかった」

◆日大系列3校目の勝利 日大三が勝利。今大会の日大系列校では日大山形が敗れたが、土浦日大、大垣日大に次ぐ3校目の勝利となった。日大系列3校が1大会で勝ったのは初めて。

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