選手が汗や涙をぬぐうと顔が真っ黒になる。4年ぶりに土集めが解禁。取材も対面になり、報道陣は激闘のにおいを間近で感じることができた。新型コロナ禍前は当たり前だったシーンにこそ、甲子園が正常に戻った実感があった。

序盤から好カードが多かった。仙台育英は初戦で浦和学院と19-9という乱打戦。3回戦では慶応が広陵と6-3、仙台育英が履正社と4-3とハイレベルの熱戦を演じた。ともに相手は優勝候補の一角。2校が決勝まで勝ち上がったのは偶然ではないだろう。

好投手を複数擁したチームが上位に残った。神村学園と土浦日大はともに初の夏4強。継投パターンが確立され、勝つたびに力強さを増した。また、初めて8強に東北勢3校が残った。投手力に加え強打が目立った。対照的に近年強さを誇った近畿勢6校は7年ぶりに8強に進めなかった。1巡目で7点差以上は4試合。レベルの均等化、全国的な底上げを感じさせた。

新ルールのクーリングタイムも注目された。序盤は10分間の休憩後に足をつったり、投手が崩れるシーンが頻発。大会が進むにつれ活用法に慣れ「ありがたい」の声が増えた。足をつる選手は中盤以降、劇的に減った。猛暑の甲子園で一定の効果があったと思いたい。検証は必要だが、来年以降も続けるべきだろう。

台風の影響で風が不規則な日が多く、大声援で声が通りにくいなど、フライを捕球できないシーンが多かった。決勝も慶応の勝利を決定づけた2点は外野同士がぶつかったものだった。新型コロナの脅威が去り、久しぶりに「甲子園の魔物」も帰ってきた大会だった。【柏原誠】