熊本王者の熊本国府が5-1で21年センバツ準Vの明豊(大分)を下し、06年の創部以来6度目の出場で初優勝を飾った。オリックス山本由伸投手(28)のフォームをまねる最速135キロのエース右腕、坂井理人(まさと)投手(2年)が、無四球1失点で高校初完投。チームはV候補だった今夏甲子園4強の神村学園(鹿児島1位)、明豊連破を自信に、15日開幕の明治神宮大会に挑み、初日の初戦で東京代表と対戦する。

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「肥後の由伸2世」こと坂井が、夏の甲子園メンバーが7人残った明豊打線を封じた。高校初完投は会心の無四球1失点。最後の打者を宝刀スライダーで右飛に打ち取ると、右手を天に突き上げた。唯一の失点は9回で完封まであと一歩だったが「ずっと(8回まで)無失点でうれしかった」と笑顔。屈指の強力打線を抑え、堂々の九州王者だ。

「昨年の冬からすり足をまねして、バランスを取るために、少しだけ足を上げている」という「由伸投法」で翻弄(ほんろう)した。日本シリーズを見て「コントロールがすごい。変化球のキレが改めてすごいと思った」と、目に焼きつけた。決勝の大一番でも「バッターのタイミングを外せた」と手応え十分だった。

前日2日準決勝で、トルネード左腕、植田凰暉(ごうき)投手(2年)が、V候補の神村学園相手に1失点完投。坂井は「悔しかった」と刺激を受けていた。

チームはバッテリー中心の堅守が持ち味。日々の2時間練習は7割をシート打撃に裂き、実戦形式の守備練習も積んできた。部員80人全員が熊本県の中学野球部出身で、硬式経験者は1人だけ。スーパースターがいない地元っ子軍団が、強豪私学に勝つ手本を示した。坂井は明治神宮大会へ「1勝を積み上げて、いい形で終われるように」と気合十分。全国舞台でも旋風を巻き起こす。【菊川光一】

◆坂井理人(さかい・まさと)2007年(平19)1月5日生まれ、熊本市出身。野球は城山3年から城山クラブで始める。三和中野球部で中3夏に九州大会出場。熊本国府では1年夏からベンチ入り。背番号は今夏が11で今秋新人戦から1。変化球はスライダー、カーブ、ツーシーム。172センチ、62キロ。右投げ右打ち。