帝京(東京)は25日、都内の同校グラウンドでOB会主催の「前田名誉監督のノックを受けよう」を行った。

「もういっちょ、いこうか~」「お~!」前田三夫名誉監督(74)とOBたちの元気な声がグラウンドに響くと、力強いノックの打球が飛んだ。

同校野球部OB会主催のイベントに、元巨人で富山GRNサンダーバーズの吉岡雄二監督(52)、巨人三沢興一投手3軍投手チーフコーチ(49)らOB70人、現役選手60人が参加した。前田名誉監督が就任50年目を節目に退任した21年夏は、まだコロナ禍にあり、退任を祝う会などを開くことができなかった。コロナ禍が終息し、野球シーズンも終盤。「気候もまだあたたかいうちに」というOB会たっての願いで実現した。

OBの選手たちに約1時間、1球1球、選手の年齢に合わせ、うまく力加減された打球が飛んだ。休みなく打ち込んだノックにも、前田名誉監督は少しも息があがることなく、「楽しいねぇ。これくらいのノックは大丈夫ですよ。いやぁ、本当、うれしかったですよぉ」と笑顔が絶えなかった。

現役時代、投手として巨人で活躍した巨人三沢3軍投手コーチは三塁でノックを受けた。「打っている姿は現役の頃と変わらず。テンポよくいい打球がきていましたね。今は優しさ、現役の頃は愛情があるノックでした」と、当時を懐かしそうに振り返った。

かつて「名人」と言われた前田名誉監督のノック。金田優哉監督(37)は「質が違う。伸びてくるんです。変幻自在です」と評した。捕れるか捕れないか。そのギリギリの所へ打球は飛ぶ。野手は一歩前へ、グラブは下から。その基本動作が要求される。前田名誉監督は「バットの使い方です。手に力が入ってしまうとボールは生きない。そういうノックはね、いくら打ってもマメができないものなんですよ」と、その極意をほんの少し明かした。

最後に行われた現役選手へのノックは一変して本気だ。約15分、右へ左へ、力強くノックの打球が飛んだ。たくさんのOBたちの前での本気と本気のぶつかりあい。前田名誉監督から現役選手たちへ。帝京の伝統を引き継ぐ思いが込められているようだった。

OBたちの感謝のノックに、これから長い冬を迎える現役選手たちへのエールが込められたノック。前田名誉監督の熱い思いがノックを通し、教え子たちに伝えられた。