仙台育英の外野手トリオが「仙6」のタイトルを総なめにする。伊藤達也外野手(18)が、仙台6大学リーグの東北学院大に進学。50メートルはチーム最速5・9秒。真っ先に試合出場を果たし「盗塁王」を目指す。斎藤陽外野手(18)と下山健太外野手(18)は同リーグの仙台大に進学。大学の目標を「歴代最多安打」と「ホームラン数日本一」に定め、優勝に貢献することを誓った。

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伊藤は元々内野手をやっていたが、2年時に須江航監督(40)から「外野をやってみないか」と言われ、外野手に転向。快足と打率を残すコンパクトな打撃で、3年春にメンバー入り。今夏甲子園では5試合に出場。準決勝・神村学園戦では三塁コーチを務め、投直を受けた神村学園・黒木陽琉投手(2年)にコールドスプレーで手当てをする姿がSNSで話題になった。自然に体が動いただけのことだったが、あまりの反響に伊藤は「びっくりしました…」と照れくさそうに笑った。

10月のかごしま国体の北海戦では7回無死一、二塁で代打出場し、犠打を決めた。8回には8-7と勝ち越し、なおも2死二塁のチャンスで伊藤が一塁適時内野安打。「(自分は)足はある。打った場所もけっこう良いところで、『もしかしたらあるな』と」。全力疾走で、勝利を決定づける9点目を呼び込んだ。9回には優勝を決める左飛をつかみ、「3年間の集大成。本当にみんなで取った優勝だったので最高に良かったです」と笑顔で振り返った。

進学の決め手は8月下旬に参加した練習で、「雰囲気がよく、ここで野球がしたいと思った」と伊藤。自身が「仙6」で活躍する姿をイメージし、目標にはソフトバンク周東佑京内野手(27)のような「盗塁王」を掲げた。現在は内野にも再挑戦中で、「中心選手になって仙台で1位になりたい」と、内外野問わずチャンスをつかみに行くつもりだ。チーム一の快足を飛ばし、誰よりも“速く”試合に出て、今度はプレーで話題になってみせる。【濱本神威】

 

○…甲子園準優勝に輝いた今夏、4番としてチームをけん引した斎藤陽外野手(18)が仙台大へ進学。同大ではスポーツ競技者の大半は「体育学科」に所属するが、斎藤は幼稚園教諭や保育士の資格を取得できる「子ども運動教育学科」に進む。

もともと子どもが大好き。仙台育英で須江航監督(40)の長女・英玲奈ちゃんと関わるうちに幼稚園教諭や保育士を志すようになった。さらに「たくさんの応援を送ってくれた大好きな地元(宮城)に恩返しをしたい」と、地元への熱い思いがそこに加わった。

夢を持って進学する一方で「プロ野球選手」の夢も追い続け、阪神ドラフト3位山田脩也主将(3年)との再会に闘志を燃やす。「(仙台大は)部員が多いので結果を出して1年生から試合に出たい。自分は身長が低いので、バットコントロールを武器にどんな球にも対応したい」と意気込み、目標に「(リーグ)歴代最多安打」を掲げた。現在は内野にも挑戦し、可能性を広げている。「妥協はしたくない」。2つの夢を追いかけるが、決して手は抜かない。【木村有優】

 

○…斎藤陽には負けられない。下山健太外野手(18)と斎藤は楽天ジュニアで一緒だった。「小学校から知り合いで、中学校では試合することもあった。ライバル視してました」。同じ高校に入学し、ポジションも同じ外野手。下山は1年秋に背番号「7」をもらったが、地区大会で腰を負傷し、2年秋までメンバー入りはかなわず。1年から出続ける斎藤を「チャンスに強い。すごいなと思います」とその実力を認める。だが「飛距離や打球速度では勝っている」。今夏甲子園決勝の慶応戦では右越えに特大二塁打を放つなど、がっちりした体格から繰り出す鋭い打球が魅力。目指すは「ホームラン数日本一」。仙台6大学でもたくさんの長打とアーチで勝利に貢献してみせる。

高校日本代表には同校から尾形樹人、山田脩也、高橋煌稀、橋本航河の4人が選ばれ、その姿が刺激になった。「大学では自分が大学日本代表に選ばれるように」と下山。4年間の先に思い描くのは地域への恩返しだ。「地域の人にたくさん応援してもらったり、支援もしていただいた。その恩返しができるようになりたい」。大学4年間でしっかりと実績を積み上げ、お世話になった町と人々に恩返しする。