“ミラクルわかば”が止まらない! 福岡大会は福岡大若葉が2戦連続のタイブレークを制し、創部6年目で初のベスト16進出を決めた。4-4で迎えた育徳館戦の延長10回無死一、二塁。犠打と前のめりな好走塁をからめてサヨナラ勝ちした。就任4年目の土井誉仁監督(53)が提唱する「リスクを取る」野球が開花。4強で実現する可能性がある福岡大大濠との兄弟校対決を目指し、異彩を放つ若葉軍団の進撃が続く。
笑顔の福岡大若葉ナインが一斉にベンチを駆け出す。何度も跳びはね、劇的決着に喜びを爆発させた。
4-4の同点で突入した延長10回タイブレーク無死一、二塁。先頭の9番川原悠耶投手(3年)が投前に犠打を転がした。処理した相手投手は三塁封殺を狙うも悪送球。ボールは大きくそれたわけではなかったが、二塁走者の大井咲汰郎(しょうたろう)外野手(3年)はその瞬間、腹をくくった。「イチかバチか。自分の判断」。
三塁で止まっても無死満塁だったが、大井は言った。「無死満塁でも、点が入るかどうかは分からない」。チームの合言葉は「リスクを取れ」。激戦区の福岡を勝ち抜くために前のめりな攻めの姿勢を貫き、受け身には回らない。セオリー度外視とも言える“ギャンブル走塁”で生還。2試合連続でタイブレークを制し、創部6年目で初のベスト16進出だ。土井監督は興奮気味に「いつもこんなゲームばかり。子どもたちがたくましい」とほほ笑んだ。
“土井イズム”で快進撃が続く。21年4月に同校へ赴任した。「私立で勝負がしたかった」。安定していた岐阜の公立教員を辞め、人生のリスクを背負って、縁もゆかりもない福岡で再出発。指導理念は「当事者性しか求めていません。選手たちがやる野球」と一貫。監督ながら、試合中にサインを出すことはない。試合当日のスタメンも選手にすべて任せる。指揮官は助言する程度だ。「指導者が与え続けると思考が止まり、生徒はただ受け身になる。まだ過程ですけど、ここまでの子どもたちの成長度合いはうれしいですよね」。異彩を放つノビノビ野球で新たな歴史をつかんだ。
今夏の目標は「大濠と対戦したい」。福岡大大濠との兄弟校対決をナインは熱望。知名度の差は歴然だが、ともに勝ち上がれば準決勝で実現するところまできた。まずはあと2勝。土井監督は選手たちを集め、言った。「1個1個積み上げろ! 次に行け!」。福岡の夏に“わかば旋風”を巻き起こす。【佐藤究】
◆土井誉仁(どい・たかひと)1971年(昭46)6月29日生まれ、横浜市出身。神奈川県立生田高から立大に進学。在学中の20歳の時、生田の監督に就任。卒業後は教員となり、これまで山手学院(神奈川)などで3度、岐阜・加茂(岐阜)で1度、両県で夏16強に進出。21年4月、福岡大若葉の監督に就任。社会科(世界史)教諭。

