<高校野球千葉大会:松戸国際6-1流山おおたかの森>◇21日◇5回戦◇QVCマリンフィールド

 最後まで笑顔で全力プレーだ。流山おおたかの森の4番・原祐介(3年)は5回戦の松戸国際戦で6回表に長打を放ち、三塁ベースコーチの指示でそのまま本塁まで駆け込んだが間に合わず、アウトとなった。悔しそうな顔はしたものの、笑顔は消えなかった。試合後、「負けちゃいました」と苦笑いして見せたが、達成感をにじませていた。「楽しかったです。悔いはないです」。

 小6の時、スパイクを履いたままコンクリートのスロープを駆け下りようとして転び、後頭部を打った。意識不明で一時は心肺停止し、生死をさまよった。幸い、3時間後に意識は戻ったが、下半身まひの後遺症があった。足の感覚がなくなっていた。精密検査をしても原因不明。「治るかどうかはわかりません」とまで告げられた。

 1カ月の入院の後はリハビリを続けた。それでも足は動くことはなく、車いすと松葉づえでの生活。母京子さんは「今はつらいけどきっといいことあるよ」と励まし続けた。父尚広さんは、家に引きこもりがちになった息子を、自分がコーチを務める野球チームへ連れて行くようになった。何度か練習を見に行くようになったある日、ノックのフライが原の目の前に飛んできた。すると動かなかった足が2、3歩前に出た。

 原

 目の前に来たのでただ取ることしか考えてなかったです。なんで動いたのかわからないですけど。

 その日から回復のスピードがあがり、けがから約4カ月後には歩けるようになった。リハビリを続け、野球が出来るまでに回復した。

 誰よりも野球ができる喜びを知っている。「野球を出来るのが奇跡みたいなものなので」といい、一番感謝しているという母に、「つらいことがあったけど本当にありがとう」と伝える。甲子園には行けないけれど「けがをしてここまで野球をやってきて、いい経験になった。乗り越えてきたものがあるから、次なにかあっても乗り越えられると思う」と最後まで笑顔で話した。