<高校野球福島大会:郡山11-9安積>◇13日◇1回戦

 郡山市内同士の対戦となった福島の開幕戦は、郡山が安積に競り勝った。両チーム合わせて27安打20点7失策と、3時間を超える大乱戦。郡山は、先発し再登板したエース落合純己投手(3年)が締め、何とか逃げ切った。

 苦しみの分だけ、歓喜のジャンプは誰より大きかった。2点差で迎えた9回表も2死一、二塁のピンチ。最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、落合は右拳を握りマウンドで高々と跳びはねた。「1度負けた相手に2度も負けられない」。昨秋の県中支部第5代表決定戦で対戦、延長13回の末敗れていた。宿敵へのリベンジに、打っても3安打2四球と全5打席出塁。距離にして約2キロしか離れていない「ダービー」を制してみせた。

 3月の地震と原発事故以降、放射性物質の飛散もあり練習は約1カ月間休止された。再開後も、グラウンドの表土除去作業が今夏以降になるため、平日は2時間、土日も半日の練習しか許されなかった。少しでも雨が降れば、室内練習場へすぐさま場所を移さざるを得なかった。この日4失策が絡んでの失点を、佐藤康弘監督は「練習の制限が大きかった。これはどこも一緒ですが…」と話した。

 個人の自宅での自主練習に依存するしかない状況だった。そんな中、落合はこっそり明かした。「先生(監督)が帰るのを待って、隠れて学校で練習していました」。エースで4番、主将。重責を果たすには、道具がそろった環境の中で練習したかった。一緒にやるパートナーを見つければ、自主練習は2時間、3時間と熱を帯びた。自宅に帰ると、日付が変わっていた。震災の影響で春の大会は中止。それだけに最後の夏への、強い思いもあっての行動だった。「(自主練習の)成果が出たと思う。特に最終回は」と、長打が出れば同点の場面を抑え切っての勝利に、満足そうに笑った。【清水智彦】