<高校野球宮城大会:東北学院3-0石巻>◇8日◇1回戦◇Kスタ宮城

 驚きの1発で宮城大会が始まった。開幕ゲームで東北学院・菊池森(もり)内野手が大会1号2ラン。1-0とリードした石巻戦の8回裏、公式戦初ベンチ初スタメンの2年生が勝負を決定づけるアーチをかけた。

 梅雨の合間の青空に白球が伸びた。8回1死一塁。左打席の菊池は初球ストレートを振り抜き、Kスタの右翼席にたたき込んだ。大会1号の公式戦初アーチで3-0。東北学院の秘密兵器が試合を決めた。この夏初めてベンチ入りし、初のスタメンで5番に抜てきという期待に見事に応えた。記念球を手にした菊池は「親に渡します。入ると思わなくて、一塁まで全力で走りました」と白い歯を見せた。

 渡辺徹監督(41)は入学時から菊池の打撃を高く評価していた。ひたむきな練習態度で、打球の速さと飛距離はチームでもトップクラス。しかし、精神面に課題があった。極度の上がり性で、試合になると結果が出ない。渡辺監督は「どこまで(精神面を)克服できるか」と、テストの意味で3月の練習試合から起用し始めた。しかしストライクに手が出ず、顔付近のボール球を空振りしていたという。4月の支部大会のメンバーからは外れていた。

 チームは春の県大会出場を逃し、渡辺監督はチームをリセット。同じ三塁手の金子貴紀(3年)の負傷もあり、再び菊池を練習試合に起用した。すると沈黙していたバットが火を噴く。5月以降の練習試合でヒットを量産し、本塁打も放った。幡手新一郎部長(32)は「試合慣れして結果が出るようになった」と証言。大会直前、4番を打っていた金子からレギュラーを奪った。

 緊張感から4、5回の守りで失策を記録し「頭が真っ白になった」とまだ課題は残っている。それでもベンチの先輩の「ミスを引きずるな」の声を受けて1発を放った。渡辺監督は「ここからが問題」と手綱を引き締める。期待の背番号5がひと皮むけるか-。2回戦で第1シードの仙台育英に挑む。【鹿野雄太】

 ◆菊池森(きくち・もり)1995年(平7)4月11日、仙台市生まれ。大沢小から大沢中に進み、軟式野球部に所属した。愛称は「モリ」。チームメートが見る性格は「おとなしい感じ」「不思議キャラ」。ポジションは三塁手。右投げ左打ち。173センチ、70キロ。