<高校野球宮城大会:石巻好文館4-3宮城広瀬>◇13日◇2回戦◇名取市民球場

 5度目の夏で、ついに勝った。08年に同好会としてスタートした石巻好文館が、サヨナラで夏初勝利を飾った。同点の9回1死満塁から吉田潤捕手(3年)が中前打で決めた。

 食らい付いた。9回裏1死満塁で笠原俊哉監督(48)の指示は「球種は関係ない。初球フルスイングだ」。吉田は詰まりながらも直球を中前へ運んだ。ついに、石巻好文館が夏の歓喜に包まれた。

 5度目の夏だった。「がむしゃらでした。とにかく勝ちたかった」と話す吉田ら3年生が1年生だった一昨年秋に、同好会から部へ昇格。しかし、ネット内で投打の練習を行う校内環境に変化はなし。さらに半年後には東日本大震災。時々借りていたグラウンドには仮設住宅が建った。それでも初勝利を目指して基本練習を続けた。

 「変わったのは部費5万円が出たことぐらい」と吉田は苦笑いする。その最初の5万円で金属バット2本を購入した。サヨナラ打で吉田が手にしていたのは、大切に使い続けたそのうちの1本だった。

 8回裏、2死三塁で笠原監督が仕掛けた同点ホームスチールが勢いを呼び込んだ。無警戒だった相手守備の動きを見極め、カウント2-2から「狙いました」。就任4カ月で表れた指導の成果だった。昨夏1回戦、古川黎明の監督として石巻好文館と対戦した。古川黎明3安打3点、石巻好文館は7安打0点。「細かいプレーの重要さを徹底させたら、選手は目を輝かせて上達した」。この日失敗ゼロの4犠打2盗塁も、競り勝つ裏にあった。

 チームの思いと監督の指導が初勝利を実らせた。部昇格時からほぼ1人で投げてきた左腕エース千葉秀太(3年)は「これでプレッシャーなく投げられます」。初めて味わう夏の心地よい汗が笑顔に光った。【船木勇治】