<高校野球宮城大会:柴田2-0古川工>◇19日◇4回戦◇仙台市民球場

 3試合27イニング無失点で10年ぶりの8強だ。柴田の横手投げ右腕・只野善昭投手(3年)が、昨夏覇者の古川工をわずか5安打。三塁も踏ませなかった。2回戦は只野が蔵王を、3回戦は2年生の岩佐政也投手が東北工大高を完封。チームも3戦無失策と鉄壁の守備で快進撃を続ける。

 ただの完封勝利ではない。3試合で27個、相手のスコアボードに0を並べ続けた。昨夏覇者の古川工をわずか5安打。2点の援護をもらった直後の6回、無死二塁のピンチでは2者連続三振と左飛で切り抜けた。三塁すら踏ませない完璧な内容に只野は「後半から(完封を)意識した。自信になる」。平塚誠監督(39)も「目指していた野球ができた」と胸を張った。

 屈辱の敗戦が全てを変えた。昨秋の県大会初戦で東北学院榴ケ岡に0-6の完敗。当時は上手投げだった只野が打たれた。直後に平塚監督が「ボールが素直すぎる」と腕を下げさせた。只野は何時間も鏡を見ながらフォームを変えた。毎日10キロの走り込みと筋トレで、体重も5キロ増やした。すると「上から投げていた時と比べて、球のキレが良くなった」と手応えをつかむ。この日は最速128キロの直球で内角を突き、「2回戦では使わなかった」というスプリットを決め球に凡打の山を築いた。

 大胆なコンバートも当たった。只野の横手投げ転向と同時に、捕手の鈴木勇汰郎(3年)と遊撃手の大庭巧己(3年)を外野へ。控え投手の庄子順也(3年)を遊撃に回し、中堅手の三浦大希(2年)を捕手にした。文字通り、チームをリセット。監督は守備練習に時間を割いた。打つ位置を定めていたノックを実戦形式に変更。「捕球が大事」と素手でキャッチする練習もした。「中学時代に少しやっただけ」というポジションに入った選手たちが、鉄壁に成長した。

 この日チームは3安打で2得点。平塚監督は「そりゃ打てた方がいいですよ」と笑うが、今大会1点も与えていないのは柴田だけだ。只野は「(対戦した)3校が流した涙をムダにしないように、ゼロで抑えたい」。準優勝した02年以来の4強へ、利府も抑え込むつもりだ。【鹿野雄太】