<高校野球神奈川大会:横浜3-2桐光学園>◇25日◇準々決勝◇横浜

 怪物の敗戦は、「松井争奪戦」のスタートになる。今秋ドラフト目玉候補、桐光学園(神奈川)松井裕樹投手(3年)が、横浜に敗れた。自己最速を2キロ更新する149キロをマークして10三振を奪ったが、2本塁打を浴びて力尽きた。

 怪物のあまりにも短い夏が終わった。2-3と1点を追う9回表2死一塁。松井はネクストバッターズサークルで試合終了のサイレンを聞いた。最後の打者、4番坂本憲吾外野手(2年)が左飛に打ち取られると、あふれ出す涙を隠すように右腕で顔を隠した。整列を終えベンチへ戻ると、届かなかった甲子園の舞台を思って泣きじゃくった。

 嫌な流れを止められなかった。2-1と勝ち越した直後の7回。先頭打者を146キロの直球で打ち取った、はずだった。一塁付近に高く上がった打球を一塁手と二塁手がお見合い。ポーンと弾んだ打球に苦笑いを浮かべるしかなかった。無死一塁とすると直後の打者がバントした球を走塁中に蹴り、守備妨害で1死。「ラッキーと思った」と油断が生じた。迎えた浅間大基外野手(2年)に投じた初球。内角高めの144キロの直球を右翼スタンドへ運ばれた。逆転を許す2ランにその場で崩れ落ちるのを防ぐように、両膝に手をついた。

 4回、先頭打者の高浜祐仁内野手(2年)にもチェンジアップをバックスクリーンに運ばれた。松井は「本塁打にされた2球が悔やまれる」と声を振り絞った。自己最速を2キロも更新する149キロを計測するなど球威はあった。ワンバウンドのスライダーも効果的に投げ、10奪三振。今大会初の2ケタ三振を記録するも、横浜打線が一枚上手だった。野呂雅之監督(52)が「高めの直球で空振りがとれなかった」と話すように徹底的に直球を狙われた。

 「いい仲間、指導者、後輩に恵まれた。本当に感謝したい」。たった2球で決まった運命。去年より一回り大きくなった怪物が、甲子園で投げる姿をもう1度見たかった。【島根純】