<高校野球岩手大会:花巻東5-1盛岡大付>◇26日◇決勝◇岩手県営野球場

 大谷先輩やりました!

 花巻東が昨夏決勝で敗れた盛岡大付に雪辱を果たし、2年ぶり7度目の甲子園出場を決めた。初回に1点を先制されるも、5回に茂木和大内野手、細川稔樹投手(ともに2年)の連続適時打で逆転に成功。6回にも3点を追加し、先発左腕細川が強打の盛岡大付打線を5安打1失点に抑え完投した。

 花巻東が1年前と同じ日、同じ場所でライバル盛岡大付にリベンジを果たした。最後の打者を右飛に打ち取ったのを見届けると、ナインはマウンドに駆け寄り、涙で、笑顔で天を指さした。

 昨秋は県大会初戦敗退。“史上最弱”と言われたこともあったチームが、どん底からはい上がり、怪物・大谷翔平を擁しても届かなかった頂点にたどり着いた。佐々木洋監督(38)は「去年は大谷という素晴らしい選手がいたが勝てず、ずっと引きずってしまった。申し訳なかった。頼もしく思って涙が出てきました」と、選手に感謝しきりだった。

 春の県大会準々決勝で負けた分のリベンジでもあった。相手投手は同じ松本裕樹(2年)。春は三塁も踏めずに完封負けを喫したが、この日は違った。1点を追う5回2死二塁。茂木が左中間を抜ける適時打を放ち1-1の同点に。続く細川の適時打で逆転に成功した。6回にも無死満塁から犠飛と茂木の2点適時打で3点を追加し、松本をマウンドから引きずり降ろした。2本の二塁打で3打点をマークした茂木は「(松本は)初球を抜いたりして、2ストライクに追い込んでから打ち取るので早いカウントで打とうと」。1本目は初球、2本目は2球目と狙い通りに打ち崩した。

 投げては2年生左腕細川が今大会6戦7発の相手打線を5安打1失点に抑えきった。パワー勝負せず、緩急と角度をつけ、6三振を奪った。春に腰や肩を痛め、この日も肩に痛み止めのテーピングをして先発。「痛いとかいってられない」と気迫の完投だった。現西武・菊池雄星に憧れ花巻東に入学。同じ背番号「17」の左腕として、チームを聖地に導いた。

 ここがスタートでもある。チームの目標はあくまで「岩手から日本一」だ。スーパースターはいない。だからこそ午前4時からの「早朝練習」など、例年以上の練習を重ねてきた。「僕たちは1人1人が頑張らないと勝つことが出来ない。応援もそうなんです」とスタンドの高橋恭兵投手(2年)は話す。あきらめず、ひたすら夏を待った部員123人が、一丸となって全国の頂点をとりに行く。【高場泉穂】

 ◆花巻東

 1956年(昭31)創立の花巻商と57年創立の谷村学院が82年に統合した私立校。生徒数は597人(女子215人)。野球部は56年創部で、部員数は123人。春の甲子園は2度出場。所在地は花巻市松園町55の1。小田島順造校長。◆Vへの足跡◆2回戦18-1金ケ崎3回戦6-2久慈4回戦9-1花巻南準々決勝8-1久慈工準決勝4-3盛岡四決勝5-1盛岡大付