<高校野球山梨大会:増穂商6-4富士北稜>◇8日◇1回戦◇山日YBS

 山梨大会の開幕戦は増穂商が富士北稜を下し、10年ぶりの初戦突破を決めた。167センチの小兵、2番渡辺真一郎内野手(3年)の大会第1号が勝負を決めた。1点を追う5回に追いつき、なおも1死一、二塁。渡辺が左越えの決勝3ラン。「初めてでまだ実感がありません」と、練習試合を含めて「野球人生第1号」に驚きを隠せない。

 内角低めの直球に体が自然と反応した。「センター返しを意識していました」と、コンパクトなスイングでクルリと回転。父由紀夫さん(60)も「脇が締まったいいスイングだった」と絶賛するほど、見事な内角打ちだった。その直前、小林達矢投手(3年)の暴投で逆転されて嫌な流れが漂ったが、一振りで吹き飛ばした。

 6月末の日川との練習試合で右肩を脱臼。ボールを投げられるまで1カ月かかると診断された。「自分だけ練習から外れて治療に行かなければならず、泣きたいときもありました」と話したが、劇的な回復で2週間で投げられるようになった。

 守備でも貢献した。三塁手が負傷し、急きょ二塁からコンバート。7回無死一、二塁のピンチでは頭上を襲ったライナーをジャンピングキャッチ。飛び出した一塁走者を刺して、併殺を完成させた。痛みが残り、投げ方もぎこちない。「チームが勝つためですから」と気迫を前面に出した。

 「ホームランはリセットして、次も自分たちの野球をします」。攻守でチームを引っ張る。【岡崎悠利】