<高校野球山形大会:山形商16-0左沢>◇12日◇1回戦◇米沢市営野球場

 大会前の練習中に2年生部員が亡くなった山形商は、5回コールドで左沢に快勝し、2年ぶりの初戦突破を決めた。ベンチ入り20人全員が出場する全員野球で、就任2年目の渋谷良弥監督(67)は同校では夏初勝利。

 仲間を失った悲しみを胸に、山形商がチーム一丸で2回戦進出を決めた。1回裏、打者一巡の14人で一挙9得点。3回は6人を送る代打攻勢で3点を追加するなど、11安打16得点で圧勝した。投げては5投手の無安打リレー。選手たちは渋谷監督に、青森山田を指揮していた11年以来、3年ぶりの夏白星を贈った。

 6月中旬の校内合宿中の練習で2年生部員が救急搬送され、帰らぬ人となった。葬儀には部員64人全員が参列。故人への思いをみんなで背負って戦う気持ちを強くした。この日、喪章を着けたのは渋谷監督だけ。「湿った気持ちで戦わせたくない」と、選手には着けさせなかった。前日11日の開会式前、故人の自宅で焼香した渋谷監督は「一緒に戦いたい」と小さな遺影を自らのベンチ横に置いて、采配を振るった。

 同級生のベンチ入り6人の2年生は、亡くなった部員の小学時の書道「夢と希望」を縮小転写したストラップを遺族から贈られた。選手たちはそれを野球バッグなどに付けてベンチ入り21人のつもりで戦った。渋谷監督は、ナインに「野球ができる幸せに感謝してほしい」と期待する。この日2安打3打点の4番歌丸翔太(2年)は「部員全員が1つになって全力で勝ちにいく」と誓った。【佐々木雄高】