<全国高校野球選手権:九州学院7-0山形中央>◇13日◇2回戦

 センバツの雪辱は果たせなかった。49代表の最後に登場した春夏連続出場の山形中央(山形)は、九州学院(熊本)に大敗した。3回裏、2年生エース横山雄哉が死球をきっかけに、失策も絡んで2点を失い、その後も失点を重ねた。打線も相手バッテリーの巧みな配球に反撃の糸口をつかめなかった。センバツでは日大三(東京)に4-14と苦杯をなめ、忘れ物を取りに戻った甲子園だったがまたしても初戦敗退。「1勝」は遠かった。

 夏も力を出し切れなかった。ミスから山形中央のリズムが崩れた。1、2回とピンチを切り抜けた横山だったが3回裏、先頭打者に死球を与えると2死後、3番山下翼中堅手(2年)に左越え二塁打を浴びる。狂った歯車は戻らない。連続四死球で満塁。「独り相撲」が守備陣にも影響を及ぼした。何でもない二ゴロを奈良崎匡伸主将(3年)が、一塁へまさかの悪送球。最悪の流れで2点目を失った。横山は「デッドボールを気にしすぎて投球がかみ合わなかった」と目を真っ赤にした。

 センバツで敗れた日大三を理想型に挙げ、夏に備えた。庄司秀幸監督(34)は日大三戦の翌日には、敵将の小倉全由監督(53)の元までアドバイスをもらいにいった。遠征のバスでは常にセンバツの試合を流し続けた。「あの強さを忘れないため、甲子園の雰囲気を維持するため」だった。

 夏の甲子園には、過去の失敗を生かして臨んだ。開幕日の第3試合だった春は、開会式から約6時間もの間、ユニホームを着たまま集中しっぱなし。中盤まで接戦を演じていたが、最後は息切れして大敗した。

 この日は宿舎を出発後、バスの中で庄司監督が「先手」を打った。「少しだけ時間をくれ」。そう言うと、ゆずの「栄光の架橋」を熱唱した。ムードメーカーの武田航輝(3年)も続く。1月に老人ホームで50人のお年寄りを前に熱唱した「栄冠は君に輝く」でナインの爆笑を誘った。

 リラックスして挑んだ九州学院戦だったが、相手が一枚上だった。2回表無死二、三塁の好機、高橋匠中堅手(2年)の遊撃頭上への強烈なライナーは溝脇隼人遊撃手(1年)のグローブをはじき飛ばす勢いだった。だが抜けない。飛び出した二塁走者小山尚哉(2年)が帰塁できず併殺となって、先制点を奪えなかった。前半は直球、後半は変化球中心の攻めに切り替えた相手バッテリーにも、してやられた。

 山形中央は横山を中心にスタメン5人に2年生が名を連ねる若いチーム。最後は「元エース」の武田直樹(3年)が2回を気迫の投球で無失点に抑えた。「最上級生の意地でした。来年は横山を中心に全国制覇してほしい」。試合後、いつも通りキャッチボールをした2人。横山から誘った。先輩の最後の勇姿は後輩が引き継いでいく。【湯浅知彦】