広島からポスティングシステムでメジャー移籍を目指す鈴木誠也外野手(27)が、ヤンキース、レッドソックス、ブルージェイズのア・リーグ東地区3球団で争奪戦の様相になっているという。特にヤンキースとレッドソックスは伝統のライバルである上にどちらのファンも熱狂的。争奪戦のゆくえが絶対負けられない戦いのごとく注目を集めている。

そんな中、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM(54)が先日、チャリティーイベントで報道陣の前に登場した。ニューヨーク州の隣にあるコネティカット州スタンフォード市で22階建てのビルからロープを伝って降りるというアドベンチャー的なイベントで、最近のオフの恒例行事となっている。

普段なら集まったヤンキースの番記者らの取材に対して補強の展望などを語るのだが、ロックアウト中は球団幹部も職員も選手に関する言及は厳禁。FA選手はもちろん球団所属の選手の名前を口にすることさえできない。

それでも果敢なニューヨークのメディアは、鈴木誠について聞いたらしい。ニューヨーク・ポスト電子版によると「それに関しては話せない。彼が米国に来るとしたら、それはメジャーレベルということ。メジャーの選手に関しては口にできない」と話したという。「ロックアウトはいつまで続くと思いますか? 終わったときは補強に動きますか?」と問われても「それについてコメントできる立場ではない」と答え、「何かニュースを得たいのですが」と言われると「分かるけれども、仕事を失いたくないので」と笑ったそうだ。

今オフは、ロックアウトまでに所属球団を決めたいというFA選手が多く、11月は契約ラッシュが起こった。ここ数年はオフシーズンの動きが鈍く、大物FA選手の契約が越年することが当たり前になっていたが、今オフだけは短期間に高額契約が続々と決まる異例のストーブリーグ。レンジャーズは大物FAのマーカス・セミエン内野手(31=ブルージェイズFA)、コリー・シーガー内野手(27=ドジャースFA)ら複数の大物を大型契約で獲得し、今オフここまでで決めた契約総額は全球団中で断トツ最高額の5億6100万ドル(約617億円)となり、話題を振りまいた。メッツ、タイガース、マーリンズなども積極的に補強に動いている。

しかしそんな中で、ヤンキースは静かだった。かつてはその資金力に物を言わせて大物を高額で獲得し常にオフの主役となっていたが、今はまったく目立たない。何も動かないキャッシュマンGMにファンからの批判が集中し、ニューヨークの地元メディアからは「コロナ明けは即効で補強に動くべき」とプレッシャーをかけられている。ヤンキースがもし獲得競争に敗れると、同GMへの風当たりはますます強まりそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)