ロックアウト(業務停止)が続くMLBで、新労使協定に関するオーナー陣と選手会の交渉が1月中旬、ようやく再開しました。24日と25日には2日連続で約8週間ぶりとなる対面交渉が行われ、両サイドがそれぞれ修正案を提示し、妥結へ向けて動き始めました。

表面的な現象だけを見ると、大きく前進したかのようですが、内情は少しばかり違うようです。選手会側がフリーエージェント(FA)取得期間短縮の要求を取り下げたり、オーナー側が年俸調停修正案を断念したりするなど、徐々に歩み寄りを見せていることは確かです。その一方で、双方の主張に大きな隔たりもあります。

例えば、最低保証年俸はオーナー側が、現行の57万5500ドル(約6330万円)から61万5000ドル(約6765万円)までの引き上げを提示したのに対し、選手会側は77万5000ドル(約8525万円)を要求しています。一見、選手会側が無謀な要求をしているようですが、オーナー側の提示額は米国の物価上昇率にも達していない、というのが選手会側の主張のようです。

今回、選手会側が提案した「調停前の選手のボーナスプール」は導入される方向ですが、これも双方の主張には大きな開きがあります。少しばかりややこしいのですが、ざっくり表現すると、調停権(メジャーでは登録年数3年以上)を得る前の選手が、タイトルを獲得するなど大活躍した場合、成績に応じてボーナスを支払うというものです。昨季、エンゼルス大谷に次ぐMVP2位となったゲレロ(ブルージェイズ)の場合、今季の63万5400ドル(約6989万円)から184万3000ドル(約2億273万円)までアップすると試算されています。そのための資金を機構がプールするというわけですが、選手会側が総額1億500万ドル(約115億5000万円)を要求したのに対し、オーナー側の返答は1000万ドル(約11億円)でした。わずか1割にも満たないその金額を見た際、選手会側の理事は思わず笑ってしまったとも伝えられています。

ロックアウト直前の昨年12月1日、最終交渉がわずか7分で終わったことを考えれば、少しずつでも前へ進んでいます。その一方で、交渉再開まで年をまたいで6週間も放置していた双方の姿勢を厳しく指摘する意見もあります。米国内では、今回の闘争を「ビリオネアー(億万長者)VSミリオネアー(100万長者)」と、からかう声も聞こえてきます。

感情論を含め、双方の溝は簡単に埋まりそうになく、最悪の場合、2月中旬のキャンプインが遅れる可能性もありそうです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)