大リーグでは最近、瞬く間に市民権を得た球種があります。エンゼルス大谷翔平投手(28)が自らのパフォーマンスにより、広く浸透させたといっても過言ではありません。

元来、米国人は力対力の勝負を好み、基本的に速球主体のピッチングでした。しかし、2015年は速球の割合が57・7%を占めていたのが、昨年は初めて50%以下に減少。一方で、15年に14・7%だったスライダーが初めて20%以上に増えました。

そして、今年大リーグでトレンドになっているのが「スイーパー」です。スライダーを細分化した球種で、鋭角に横に曲がるスイーピング(sweeping)スライダーを略して「スイーパー」と呼んでいます。その新球種スイーパーの一番の使い手が、エンゼルス大谷です。

今季は大リーグでもスイーパーを使う割合が一番多く、ここまで619球のうち303球がスイーパーです。自己最多13三振を奪った5月3日カージナルス戦でも、スイーパーが全球種で最多の54%を占めました。昨季も2629球中で983球は最多の球種でしたが、今季はさらに割合も37・4%から約48・9%へと急増。今や、大谷の代名詞の球種になっています。

ただ、本当の意味で「新球種」ではありません。あくまでもスライダーの一種として、新しい呼び名になっただけです。古くは、「レフティー」こと殿堂入りスティーブ・カールトン(元フィリーズ)も同様の変化球を武器にしました。1968年の日米野球で来日した際、「日本で覚えた」というスライダーを取り入れ、一躍大投手へと成長。左腕では歴代2位の通算329勝を挙げました。

また、最も印象に残っているのは右腕デーブ・スティーブです。1980年代の大リーグを代表したブルージェイズのエースで、鋭く横に曲がるハードスライダーが武器でした。9回2死から3度もノーヒットノーランを逃し続け、「4度目の正直」でノーヒッターを達成したことでも話題となりました。

ほかにも、速球王ノーラン・ライアン2世と称され、1998年に大リーグタイ記録の1試合20奪三振をマークしたカブスの右腕ケリー・ウッド、ヤンキース時代の99年に完全試合を達成した右腕デビッド・コーンの名も挙げられます。彼らが投げていた決め球スライダーは、今ならスイーパーでした。

開幕からスイーパーの名を一気に定着させた大谷は、まさに今の時代にマッチした投球スタイルと言えます。この「必殺球」を看板にした往年の大投手たちのように、どんな偉業を成し遂げてくれのか楽しみです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

エンゼルス大谷(2023年4月撮影)
エンゼルス大谷(2023年4月撮影)