ここ2試合のダルビッシュは、フォームから力みが取れている。力感がそれほどなく、軽く放っている印象。以前のように目いっぱい投げるのではなく、リリースの瞬間だけピュッと力を入れ、楽に投げられるフォームになっている。悪い時は、球が暴れ出すとなかなか止まらない。四球で走者をためてから本塁打され、大量失点するパターンが多い。それがここ2戦はない。投球が安定してきた証拠だ。

加えて、この試合は動くボールがよかった。フォーシームの直球は少なめで、90マイル(約144・8キロ)前後のカットボールを多投した。ボールが動き、バットの芯を外すため、早いカウントから積極的にストライクゾーンの中で勝負できる。ファウルで粘られても四球を出さずに抑えられたのは大きい。5回(15アウト)までで8三振を奪い、かつゴロアウトも多い(併殺打含め5)のは、いかに動くボールが効果的だったかということだ。

1回にイエリチに打たれた本塁打はしょうがない。外からストライクゾーンに入ってくるバックドアのカットボールを逆方向の左翼席に運ばれたらお手上げだ。さすが本塁打王争いでトップを走る打者。逆に言えば、失点はこの1本だけ。ずらりと左打者を並べられても内外角で揺さぶり、膝元へのスライダーで三振も取れていた。シーズン終盤に向け、大きな期待を抱かせる内容だった。(日刊スポーツ評論家)