新型コロナウイルスに挑戦を阻まれているマイナーリーガーたちは今、何を思うのか-。ソフトバンク砂川リチャード内野手(20)の兄で、マリナーズ傘下マイナーで3年目を迎える砂川ジョセフ投手(22)が10日、電話取材で現状を明かした。

昨季は1Aウェストバージニアパワーに所属。最速156キロ右腕はコロナ禍による未曽有の事態の中で、懸命に前向きな感情を保っていた。【取材・構成=佐井陽介】

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砂川ジョセフは今も、マリナーズキャンプ地の米アリゾナに残っている。それは「幸運なこと」だという。

今年2月、幼少期から高校時代まで暮らした沖縄の幼なじみ、未来(みく)さん(22)と結婚。シカゴで暮らす愛妻の祖父母がアリゾナに別荘を持っており、キャンプ打ち切り後もこの別荘を拠点に、トレーニングができている。

「マイナーリーガーの仲間はみんな、早く野球をしたくて仕方がない、という感じです。僕自身も20年に向けて頑張ってきたところがあって、他の選手以上に早くやりたいという気持ちはあるかもしれません」

18年にマリナーズからドラフト6巡目で指名されたが、同8月に右肘を手術した。昨季は1Aチームに所属しながら地道なリハビリを継続。今季は満を持してアリゾナでのマイナーキャンプに参加していたが3月中旬、チームは新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時的に解散を余儀なくされた。

「じゃあ、オレたちは今から一体何をしてりゃいいんだ!」。声を荒らげる仲間もいた。1A選手の練習環境は当然、メジャーリーガーのそれほど整ってはいない。球団施設が閉鎖され、練習場所の確保に苦しむ選手は決して少なくなかった。砂川は現在、理学療法士のもと週4、5回のペースで練習をしている。キャッチボールやウエートトレもできているが「それは僕が幸運なだけです」。練習量を落とさざるを得なくなった選手は多いという。

砂川によれば、マリナーズ1A選手のシーズン月給は、昨季ベースで遠征時のミールマネーなどを含めても20万円に届くか届かないか。オフシーズンは給料が出ないため、有望選手でもピザ配達などのアルバイトで生活費を工面する。金銭的に苦労してでも野球に懸けている若者たちからすれば、コロナ禍の長期化は今後、選手生命を左右しかねない問題といえる。

メジャーリーグ機構からのサポートがない訳ではない。現状、キャンプ打ち切り後、メジャー契約を結んでいないマイナー選手には週400ドル(約4万4000円)が支払われている。ただ、現時点で5月31日が期限となっており、6月以降も継続支給されるかどうかは不透明だ。

10日現在、メジャーリーグ、マイナーリーグの開幕日は未定のまま。砂川は「いつシーズンが始まっても投げられるように準備するだけです」と静かに言った。大リーグ全体で数千人いるマイナーリーガーたちもまた、コロナの早期終息を切に願っている。

◆砂川(すながわ)ジョセフ 1997年(平9)11月28日、米ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ、沖縄・北中城村育ち。北中城高、南ネバダ大を経て18年MLBドラフト6巡目(全体178位)でマリナーズ入団。父は米国人、母は日本人。ソフトバンクの砂川リチャードは実弟。最速156キロ。186センチ、105キロ。右投げ右打ち。