2021ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたようにリアル二刀流が本格的に浸透した1年だった。今季のレギュラーシーズンで、エンゼルス大谷翔平投手(27)のリアル二刀流は4月4日(日本時間5日)のホワイトソックス戦から始まった。DHを解除して「2番投手」で起用され、投打で同時出場した。シーズン23度の登板のうち、リアル二刀流は19度。3度は投手専念で、1度はDH制が使えないナ・リーグの本拠地で「2番投手」としてプレーした。

大谷がDHのあるア・リーグに在籍するからこそ成立する言葉だ。打順こそ上位に入ることはめったにないものの、ナ・リーグの試合は投手が打席に立つ。仮にこれをリアル二刀流とみなした場合、ナ・リーグで登板する投手は全て当てはまってしまう。一方のア・リーグではDHに強打者を起用して攻撃的オーダーを組み、打撃で劣る投手は打席に立つ必要がない。だが大谷の場合、高い打撃力を生かすため、あえてDHを解除して上位の打順に組み込む。投手力だけでなく打力も刀になるということ。つまり、リアル二刀流とは、DH制のア・リーグで、投打同時出場することと細かく定義できる。

6月23日、エンゼルスは交流戦でナ・リーグ西地区のジャイアンツと戦った。ア・リーグに所属するエンゼルスの本拠地での試合のため、DH制の採用が可能だった。エ軍は先発登板の大谷をDH解除のリアル二刀流として起用。一方のジ軍は投手を打順にいれず、DHありで戦った。ア・リーグのチームがDHを解除し、普段は投手が打席に立つナ・リーグのチームがDHを使用したことは、MLB史上初めてとなった。リアル二刀流が生んだ珍現象だった。【斎藤庸裕】