日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)がプライベートで米国オークランドを訪問。アスレチックスとエンゼルスの開幕カード3試合を見届け、観戦記を寄せた。

前日1日(日本時間2日)には大阪桐蔭、阪神の後輩でもあるアスレチックス藤浪のメジャー初登板を見届け、今季からメジャーで導入された投球間の時間制限「ピッチクロック」のワナも指摘。大谷のすごみと藤浪の可能性を力説した。【取材・構成=佐井陽介】

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オークランドの三塁側内野席から開幕カード3試合を満喫させてもらいました。メジャーの試合を生観戦するのは初めて。日本の素晴らしい球場の数々と比べても、開放感がありますね。藤浪晋太郎と大谷翔平の対決や投球を目に焼きつけ、グッズショップで帽子を選び、売店でホットドッグを買って…。一野球ファンとして貴重な時間を堪能させてもらいました。

2戦目に先発した晋太郎は大阪桐蔭、阪神の後輩。長年の苦労を知るだけにメジャー初登板の初球、真っすぐでズドンとストライクを奪った瞬間は鳥肌が立ちました。初回、2回は完全投球。ただ、8失点した3回は今季から導入された投球間の時間制限「ピッチクロック」のワナも浮き彫りになったと感じます。

先頭打者に四球を与えたあたりから後手に回り、配球も直球とフォーク主体からスライダー中心に変わった印象。この回は打者9人に3四球5安打1犠飛で降板しましたが、投球リズムがやや単調になり、打者主導のテンポにハマっていたようにも映りました。

従来であれば、打者のテンポにのみ込まれた場合、投手には「間」を空ける作業も可能でした。ただ、ピッチクロックが設定された以上、簡単に「間」を空けるわけにもいきません。時間制限違反となれば、ボール球が1球追加されてしまいます。相手の間合いに入ってしまった時にどう抜け出すか。今後はテンポに強弱をつけるなどの策も必要かもしれません。

一方、開幕投手を務めた大谷も特に立ち上がりはまだピッチクロックにやや戸惑いがあるように感じました。捕手との呼吸が少しでも合わなければ時間がなくなるので、それも仕方がありません。ただ、捕手がファウルフライの目測を誤って捕球できなかった直後から一気にギアチェンジしたのはさすがでした。味方のミスから崩れるようでは並の投手。超一流の力をあらためて見せつけた形です。

大谷とは14年日米野球の侍ジャパンで同僚でした。それもあって、投手藤浪と打者大谷の対決は心の底から楽しみにしていました。1打席目はフォークで一ゴロ。2打席目は外角高め159キロで左翼フェンス直撃の適時打。晋太郎目線で言えば、高校時代から相性が良くなかった中で、世界屈指の強打者を1打席目に封じられたことは自信にすればいいと思います。

初回はトラウトからも空振り三振を奪いましたが、勝負球となったフォークは日本の頃と比べて落差が1・5倍あり、かつ動くイメージ。そんなボールで150キロ以上を出せば、いくらメジャーの打者といえど簡単には打ち崩せないはずです。大谷がすごいことは誰の目にも明らかですが、晋太郎の今後にも楽しみしかありません。捕手と配球のすり合わせが進めば、米国でも必ず通用すると見ます。(日刊スポーツ評論家)