アスレチックス藤浪晋太郎投手(29)が12日(日本時間13日)、本拠地レンジャーズ戦で待望のメジャー初勝利を手にした。
タイブレークに突入した延長10回、2点を勝ち越された直後の1死一、二塁で登板し、2/3回を無失点。自身初の2戦連続ゼロ封でピンチを断つと、その裏に3番ルーカーに逆転サヨナラ弾が飛び出した。先発4試合で4連敗し、中継ぎへの配置転換から7試合目での劇的星は、タイブレークでの日本人初勝利。古巣阪神がセ・リーグ首位タイに躍り出た日、太平洋の向こう側で復調への第1歩を踏み出した。
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藤浪は輪の大外で仲間と体をぶつけ合いながら、ピョンピョンと跳びはねた。1点を追う10回裏無死一、三塁。ルーカーの弾丸ライナーが左中間フェンスを飛び越すと、破顔してホームベースへ走った。「ベースボールを純粋に楽しみたい」。ようやく言葉を体現できた。
2点を勝ち越された直後の10回表1死一、二塁で登板。2番グロスマンを外角154キロで見逃し三振に仕留めるなど、ストライク率64%で2/3回を無失点に封じた。3番ローに四球を与えた後、2死満塁で4番ヤングから右飛を奪うと、逆転サヨナラ3ランでメジャー初勝利が転がり込んだ。
開幕から先発で4戦4敗。中継ぎ転向後も制球難に苦しんだ。防御率は10点台を優にオーバー。それでも「チャレンジしにきたのだから」と逃げなかった。打者の傾向と配球を地道に研究し、メカニックの安定を図った。古巣阪神の仲間たちの感情を思えば、下を向いている暇などなかった。
「あの時、岩崎さんが言ってくれた一言が素直にうれしくて…」
アスレチックス移籍が決まった1月下旬。甲子園で会見中、同僚17人からのサプライズエールが待っていた。大型ビジョンに流れる映像に感極まってから数日後、食事の席で先輩からかけられた言葉は宝物だ。
「あの日コメントを出した選手に『えっ藤浪にコメント?』って感じた人は1人もいないと思うよ」
21年12月、大リーグ挑戦希望を球団に直訴した。それから9カ月間、意思が翌朝に報道されると知った9月下旬まで、チームメートには「誰1人伝えられなかった」。努力の向きどころを誤解されるのでは…。そんな不安を吹き飛ばしてくれた仲間への感謝は強い。
「みんなめちゃくちゃ喜んでくれた。自分は勝手に出ていく人間なのに…」
古巣阪神はこの日、セ界で首位に並んだ。「みんなが頑張っているのは本当にうれしい。今年は優勝してくれると思っています」と信じる右腕。泥くさくはい上がる姿が、恩返し表現の1つになる。【佐井陽介】
◆阪神坂本 ちょくちょく僕のほうから一方的に連絡してますけど、結構、前向きな感じで野球をやっていたので、大丈夫じゃないかなと思っていたら、勝ちがついたというので、安心しました。メジャーリーガーをバタバタ抑える晋太郎をもっともっと見たい。
◆阪神梅野 よかったやん! マジで待ち望んでいたことは正直ある。気分も変わるやろうし、もっともっと飛躍してほしい。いい時も悪い時も、自分がタイガースの現役の中では一番見ている。そういう意味で本当にうれしい気持ちと、おめでとうと伝えたい気持ちと、まず1勝できてよかったねと伝えたいかな。
▼タイブレーク 野球やソフトボールで、早期決着を目指して延長戦で人為的に走者を置く特別ルール。MLBでは延長イニングを無制限で行っていたが、20年から採用。延長10回から無死二塁で攻撃を始め、打順は前の回の終了時点から引き継ぎ、先頭打者の直前の選手が走者となる。



