10月から始まるポストシーズンに向け、メジャーリーグはさらに熱くなる。
シーズン途中にブルージェイズからアストロズに移籍した菊池雄星投手(33)は移籍後は8試合に登板し、5勝0敗で貢献。ワールドシリーズに進出すれば、花巻東の後輩、大谷翔平投手(30)擁するドジャースとの対戦にも注目が集まる中、26年のWBC、28年のロサンゼルスオリンピック(五輪)での共闘への思いなども語った。【久保賢吾】
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7月末、菊池は自身初のトレードでア軍に移籍した。メジャーで3球団目となる新天地で衝撃を受けたのは、勝利後のチーム内の雰囲気だった。
「ビックリしたのは、チームが勝ったのに、勝ったか負けたか分からないぐらい静かなんです。音楽は低音で5~10分かけたら終わりですし、踊ったりもしなくて。(本塁打後の)セレブレートもそんなにしないし、椅子に座ったままハイタッチする感じで、ちょっと違和感があって」
メジャー6年目で初体験した空気感。理由を聞き、答えに驚きと衝撃を受けた。
「『静かだね』って聞いたら『ポストシーズン出てからでしょ』みたいな感じで言ってて。7年連続でALCS(ア・リーグ優勝決定シリーズ)までいってるチームなんで『シーズン中にどうやって盛り上げるか分からない』って(笑い)。ずっと勝ってるチームはこうなんだなって」
常勝軍団の中心には、メジャー屈指のリードオフマンのアルテューベがいる。背中で進むべき道を照らし、チームをけん引する。
「アルテューベが毎日試合に出て、練習も一生懸命やって、淡々とやる姿を見たら、誰も何も言えないし、(チームの)北極星みたいな感じですかね。常に輝いているから、いつも見ておけば大丈夫みたいな、そういう安心感があります」
マリナーズでイチロー、ブルージェイズでターナーらと接する中で、超一流選手の共通点を肌で感じた。
「メジャーでリスペクトされる人がよく言われてるのが『He always same guy』って言葉なんですけど『あいつ、いつも一緒の人間だよね』って。どんなにいい時も悪い時も、いつも一緒だよねってことなんですけど、長く活躍する人には共通してますね」
自身も19年からメジャーでプレーする。異国の地で大事なこととは。
「アメリカ人になることですかね。球場に入ったら、アメリカ人だと思っています。英語も話しますし、ヒマワリの種もフッと吐きますし(笑い)。『日本人ならもっとこうなのに』って思った瞬間に彼らと見てる世界が違うままだなと。一緒のものを見ないと、入ってくる情報量が絶対違うはずなので」
初のシーズン中の移籍もプラスに捉えた。データ班から配球面などの助言を受け、ボールの使い方、思考をチェンジ。迷いはなく、変われる楽しみの方が勝った。
「ブルージェイズに3年いたので、3年1つの目標に向かって戦ったら、それは高校野球みたいなものなので、別れるのはつらかったです。でも、同時にすごく楽しみでした。また出会いがあって、新たな発見しかないだろうし、伸びしろしかないよねって。だから、トレードが決まった時はすごく興奮した」
新たなスタートは、苦労もあるが、周囲からの先入観もなくなる分、可能性が広がるチャンスにもなる。
「何年かいれば、雄星だとこれくらいだよねっていう雰囲気が出てきます。何勝して、防御率はこれくらいかなとか。無意識にコンフォートゾーン(心理的な安全領域)で話をしちゃうんです。でも、移籍すると先入観もないし、どれくらいやってくれるんだという目に変わる。移籍の醍醐味(だいごみ)というか、そういう雰囲気が人を伸ばしていくんだろうと」
探求心や好奇心は、グラウンドを離れても変わらず。それが活力へと変わる。
「なんか、行った先々で楽しむんですよ。野球もそうだし、街も探検したりとか。遠征に行ったら、地図も持たずに街を歩いて美術館に行ったりとか、カフェにフラッと入ったりしています。検索したらつまらないんで、情報を一切見ないのがポイントですね。ホワイトハウスを1周したり、知らないことを知れるのは楽しいです」
NPBで実績を挙げ、メジャーで6年プレーしながら、縁がなかった侍ジャパンへの思いは、胸の中に持ち続ける。26年はWBC、28年にはロサンゼルス五輪が予定される。
「チャンスがあればと常に思ってますし、勝ってほしいなって応援してます。やっぱり日本の野球が盛り上がってほしいし、いつかは代表に選ばれたいなとは思ってますけどね。(五輪のメジャー選手出場は)MLBのルールがどうなってるか分からないですけど、選んでいただけるなら、ぜひっていう思いは持っています」
実現すれば、花巻東の3学年後輩の大谷との共闘にも、大きな注目が集まる。
「いつかは一緒にとは思ってますけどね。近いところで言うとWBCですかね。日本で4000校ぐらいある高校の中でメジャーに来て、プレーしてるわけですからね。しかも、世界の舞台で戦えてるわけなんで。いつか、一緒のユニホームを着たいなっていう思いはあります」
ただ、今は目の前の戦いだけに集中する。アストロズの選手たちが「出てからでしょ」と表現したポストシーズン。自身初のワールドチャンピオンを目指し、菊池が左腕を振る。
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