<ナ優勝シリーズ:ドジャース7-2フィリーズ>◇第3戦◇12日(日本時間13日)◇ドジャースタジアム

 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)=四竈衛、佐藤直子通信員】ドジャースが黒田博樹投手(33)の「ケンカ投法」でフィリーズに快勝し、対戦成績を1勝2敗とした。第3戦に先発した黒田は、初回に大量5点の援護を受け、6回0/3を5安打2失点。厳しい内角攻めで乱闘寸前の騒動にも1歩も引かず、プレーオフ2勝目を挙げた。代打で登場したフィリーズ田口壮外野手(39)は、黒田との対戦で遊ゴロに倒れた。なお、第4戦は13日(同14日)、ドジャース・ロー、フィリーズ・ブラントンの両先発で行われる。

 1歩も引かないどころか、立ち向かっていきそうな形相だった。3回表2死。一ゴロに退けたビクトリノが発した言葉の意味を、黒田は正確には理解できなかった。だが、その場の不穏な空気は分かった。ベンチへ戻ろうとする足を止めて、逆に1歩踏み出し、鋭い眼光のまま日本語で言い返すと、球場全体のムードが一変。両軍ベンチ総出の乱闘寸前の騒動に発展した。

 「英語は分からなかったですが、周りもエキサイトしてましたし、僕もマウンドに上がるとエキサイトしますから」。黒田の果敢な内角攻めが、敵地で連敗したドジャースの停滞ムードをかき消した。

 初回に5点の援護を受けた黒田は、ドジャースタジアム史上最多となる5万6800人の地元ファンの声援を背に、容赦なく、内角を攻めた。3回表、ビクトリノの初球に頭上付近へ速球がバックネットまで抜けた。審判はすかさず「警告試合」のコール。ビクトリノは黒田に対し、「(投げるなら)頭でなく体にしろ」とジェスチャーを見せたが、黒田は顔色ひとつ変えずににらみ返した。「危ない球だったと思う。ただ、試合に集中してますし、みんな熱くなってましたから」。その後に一ゴロに打ち取って、一塁ベース付近で一触即発になった。第2戦で主軸のラミレス、マーティンが背中を通る球を投げられていた。この日も女房役マーティンが死球とやはり頭部付近への球を投げられていた伏線があった。

 調子はベストではなかった。「スライダーも変化球も良くなかったです」。補ったのは、4日の地区シリーズ第3戦で好感触を得た高速フォークだ。「空振りを取ることよりゴロを打たせる」目的で、これまでより握りを浅めにアレンジ。90マイル(約144キロ)前後の球速で鋭く沈む球に活路を見つけた。

 7回表。無死から3連打を浴び、2点目を失ったところで交代を告げられた。わずか84球。点差もあり、公式戦なら続投の展開だった。「本当は7回の最後まで投げたかったんですが、シリーズで自分の欲は関係ないですから。この時期に野球をできることで充実感はあります」。

 ドジャースがリーグ優勝決定シリーズでドジャースタジアムで勝つのは、世界一になった88年以来だ。マウンドを降りる際、スタンド総立ちの拍手が、黒田にとって最高のご褒美だった。【四竈衛】