2月2日に警視庁に逮捕されてから3カ月半。清原和博被告(48)の初公判が今日17日、東京地裁で開かれる。薬物依存症患者が再使用せず、回復に向けて3カ月間過ごした時、どこまで回復できるのか。神奈川県立精神医療センター(旧せりがや病院)の黒沢文貴医長(40)は、再使用への渇望期は脱しているとみる一方、「裁判の後こそ、回復に向けた本当のターニングポイント」と指摘する。

 初公判を迎える清原被告はどんな状態なのか。黒沢医長は「一般的には再使用への欲求が強い渇望期は1~2週間から2カ月。この期間は脱している可能性が高い。最後の使用から10日~14日間続く解毒中のろれつが回らない症状などもでない」とみている。一方で、渇望期を過ぎても「再使用の欲求はなくなるわけではない。ちょっとした環境の変化でも、欲求は高まる」と指摘する。

 「容疑者、被告として過ごしてきた刑事手続きの流れが終わり、本当に社会と直面することになる裁判後こそ、再使用のリスクが高まる。これからが、清原さんの運命を分けるターニングポイントになる」

 清原被告は3月17日の保釈後、「持病の糖尿病等の検査・治療」のためとして、千葉県内の病院に入院した。しかし、この病院には薬物依存症の治療科はなかった。その後、転院したとの情報もあるが、明確に薬物依存症の治療を行うという意思表示はない。

 黒沢医長は「俗に『薬を抜く』といった病院では、薬物中毒の解毒だけで、依存症の治療にはならない。適切な依存症治療の環境に身を置かなければ、回復の方向へ向かうことは難しいと思います」と言う。

 日本の薬物依存治療の標準的プログラム「SMARPP」(スマープ=せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)が開発された神奈川県立精神医療センターでは、患者たちが、グループミーティングなどを通して、依存症の知識や対応法などを学びながら、回復を目指している。

 黒沢医長は「スマープをやった人の1年後の治療継続率は7割。やっていない人は2~3割。回復に向けた効果はある」と話す。その上で「病院が絶対ではない。ダルクでも施設でもいい。自分の身内や限られた少人数ではなく、依存症を理解してくれる第三者的な多くの人間と関わり、相性のいい回復方法と出合ってほしい」と話す。

 黒沢医長は「法的に良い悪いは別として、依存症治療の過程においては再使用(スリップ)はありえる。その時、スリップを明かして回復を続けるか。やはりダメだと、再使用を繰り返してしまうか。その選択です」と話した。

 黒沢医長は40歳。少年時代に見た1987年の日本シリーズ最終回に「西武清原」が流した涙をよく覚えている。「1人では回復できません。環境を整えて回復していただきたい」。個人的にもそう思っている。【清水優】

<清原被告薬物事件の経過>

 ◆14年3月6日 週刊文春3月13日号が、「緊急入院 薬物でボロボロ」などの見出しで清原被告の薬物疑惑を報道。オフィスキヨハラは法的手段での抗議を検討と見解を発表

 ◆同年9月22日 清原被告が亜希さんとの離婚発表

 ◆16年2月2日 警視庁が東京都港区の清原被告宅を家宅捜索。覚せい剤取締法違反(所持)容疑で現行犯逮捕

 ◆同4日 清原被告を所持容疑で東京地検に送検

 ◆同15日 清原被告に覚醒剤を譲り渡したとして警視庁が小林和之被告(45)を覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡)の疑いで逮捕

 ◆同23日 東京地検が覚せい剤取締法違反(所持)の罪で清原被告を起訴。警視庁は同法違反(使用)容疑で再逮捕

 ◆同25日 清原被告を使用容疑で東京地検に送検

 ◆3月7日 東京地検が小林被告を覚せい剤取締法違反(譲渡)の罪で起訴

 ◆同8日 東京地裁が、清原被告の初公判を5月17日に開くと決定

 ◆同15日 東京地検が清原被告を使用の罪で追起訴

 ◆同16日 弁護人が東京地裁に保釈を請求

 ◆同17日 東京地裁が清原被告の保釈を許可。午後7時前に保釈され、千葉県内の病院に入院

 ◆4月1日 東京地検が清原被告を覚せい剤取締法違反(譲り受け)の罪で追起訴。小林被告は譲り渡しの罪で追起訴

 ◆同27日 小林被告が初公判で起訴事実を認める

 ◆5月9日 小林被告が保釈される

 ◆同17日 東京地裁で清原被告の初公判