プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月9日付紙面を振り返ります。2007年の6面(東京版)は広島新井貴浩、涙のFA宣言でした。

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 広島新井貴浩内野手(30)が8日、涙のFA宣言を行い、移籍の意思を表明した。広島市内のホテルで行われた会見では広島残留の可能性を完全否定した。獲得を熱望する阪神への移籍が濃厚になった。

 新井は会見の冒頭から大粒の涙をこぼし、約20秒間も黙り込んだ。「つらいです…。僕はカープが大好きなので」と声を絞り出した。広島側とは何度も話し合い、自分が納得して野球ができる環境かどうかを見極めてきた。基本線は常に残留だったが、結局は「優勝争いをしたい」という選手としての夢を優先し、移籍の結論に達した。「正直、自分はカープに残るのだろうと思っていた。でも一野球人として自らを厳しい環境に置き、その中で自分がどう変わっていくか挑戦する気持ちが出てきた。(でも)もうカープのユニホームが着られないというのが寂しいです」と言った。

 一方で広島は、05年の本塁打王で不動の4番の移籍により窮地を迎える。絶対的エースの黒田も大リーグへのFA移籍が確実な情勢で、10年連続Bクラスのチームから投打の大黒柱が抜けるという非常事態が現実的になってきた。松田オーナーは「前に進まないといけない」と宣言し、外国人の積極補強に出る。またミスに目をつぶって早くから1軍で使う英才教育の方針も転換する。試合を落としながら1人前に育てても、新井のようにFA権を取得し、移籍という悪循環を断つのが狙いだ。

 投手2人、野手1人を補強する方針を固めた。松田オーナーは「まず全力を尽くして外国人のサードを取りにいく。力と年俸のバランスがよければ高くても金を出す」と強気に言う。だが、資金面で豊富といえないだけに限界がある。新井のFA宣言とともに、経営手腕がクローズアップされてきた。

 ◆新井貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日、広島県生まれ。広島工から駒大を経て98年ドラフト6位で広島入団。05年に43本塁打で初のタイトルを獲得。今季は不動の4番として2年連続100打点以上をマーク。189センチ、95キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億2300万円。

※記録と表記は当時のもの