西武渡辺直人内野手(36)が先発起用に応え、2安打1四球と、相手のリズムを崩す走塁でチャンスメークした。

 4回の第2打席は涌井の低めの球をとらえて、三遊間を破る安打で出塁。すると大きなリードと、いかにも何かを仕掛けそうな怪しい動きで、涌井の注意を引いた。続けざまに5球もけん制球を強いて、次打者の外崎への集中をそぎ、四球を出させた。

 6回無死一塁の第3打席も涌井に追い込まれながら、外角低めいっぱいの球をバットの先で拾い、右翼手の前にしぶとく落とした。これで走者メヒアは三塁まで進み、次打者外崎の三ゴロの間に生還した。

 真骨頂は8回の第4打席。今季被安打1、無失点のロッテ内にやはり早々に追い込まれたが、そこからファウルで粘った。152キロの直球をカットし、地面スレスレまで落ちるナックルカーブも、バットを投げ出しながらファウルにする。最後はフルカウントから、低めの変化球を見極め、四球で出塁した。

 ここで代走田代に譲り、お役御免となった。同点の9回から延長にかけては、水が満タンに入ったペットボトルを手に、ベンチの最前列で声をからした。「いつサヨナラ勝ちになってもいいようにね」という。

 試合は引き分けに終わったが、辻監督は「直人はさすが。培ってきた技術、重ねてきた経験があってのことだから、若手にまったく同じことをやれとは言わないけど、何としても先発の責任を果たすという気持ちの部分なんかは見習ってほしい」とたたえた。菊池、涌井の両先発こそ好投したが、両軍合わせて7失策と荒れた試合になった。それだけにかえって、渡辺直のいかにもプロらしいプレーが光った。【塩畑大輔】