お待ちかねの白星だ。ロッテ石川歩投手(29)がDeNA打線を7回7安打1失点に抑え、今季7試合目にして1勝目を手にした。昨季の最優秀防御率右腕が開幕から6戦6敗。球威、制球とも精彩を欠き、4月後半から1カ月間の2軍落ちも味わった。この日は最速147キロの直球を軸に、9奪三振の力投。ようやく、本来の投球を取り戻した。

 勝利でベンチを飛び出した石川は、ちょっと口角を上げた。「うれしい。長かった」。ぽつり、ぽつりと素朴に気持ちを表した。

 開幕から6戦全敗。まさかだった。直球が走らない。「毎日、試行錯誤です」と首をひねり続けた。最大の原因は、始動時に右足に体重が乗らないこと。1カ月の2軍調整でも直らなかった。5敗目を喫した5月30日の阪神戦は5回もたず7失点KO。ベンチでタオルに顔を埋め、動けなかった。再びの2軍落ちが、いったんは決まった。

 翌日。小林投手コーチに「2軍に逃げるのは簡単。1軍で調子を戻せ」と背中を押された。迷った。1軍では迷惑をかけるかも知れない。それでも、最後は自らの意思で監督室をノックした。「もう1度、投げさせて下さい」と、自己主張をしないタイプの男が頭を下げ、首脳陣を驚かせた。意欲は買われた。次カード、チームが広島遠征の間に、徹底して体重移動を見直した。前回6日の中日戦。敗れたが8回3失点と好投。きっかけをつかんだ。この日の9三振は全て直球で奪った。左打者の懐を攻めた。WBCでともに戦った筒香から2三振。4回、6回と、内角へズバッと決め、反応させなかった。

 変化は試合直前にも出ていた。登板前に「オエ~」と、えずくことで知られるが、今季は、それが消えていた。だが、前回から再び、えずくようになった。あるスタッフは「良い緊張感が戻った」と、本来の姿に目を細めた。伊東監督は「涌井と2人、しっかり仕事をしてくれれば上に行ける」。まだ借金20だが、6月は6勝5敗と上昇気配だ。そこに、石川もいる。【古川真弥】