青森県29年ぶりのプロ野球1軍公式戦となる楽天-オリックス戦が28日、弘前市・はるか夢球場で開催された。入場券は即日完売、超満員1万3227人の観客が詰めかけ、初の「地元チーム」凱旋(がいせん)に熱狂した。これまで唯一、楽天が1軍公式戦を開催していなかった青森で試合を行ったことで、球団創設13年目にして、ようやく東北6県制覇を果たした。始球式は三沢市出身の太田幸司氏(65)が投げ、楽天梨田昌孝監督(63)が捕手を務めた。青森出身の細川亨捕手(37)が今季初先発で初安打を記録。チームも勝利を収め、故郷に錦を飾った。

 29年ぶりにプロ野球の灯が、青森の地にともった。始球式で、太田氏の右手から白球が放たれた瞬間、球場は熱狂に包まれた。青森のレジェンドは久々のマウンドを感慨深げに振り返った。

 太田氏 東北で青森が一番遅れていた。これをきっかけに毎年プロ野球がやれるようになってほしい。実際に見て、子供たちが憧れるような道筋を、弘前がさきがけてやってくれたのはすごくうれしい。

 プロの圧巻のプレーに目を奪われた。初回にいきなり2番ペゲーロの先制本塁打が飛び出すと、球場のボルテージは一気に最高潮へ。深浦町在住の斉藤実さん(53)は「プロ野球の試合を青森で見られるなんて夢にも思わなかった。来年も絶対に弘前でやってほしい」と心を震わせた。弘前市内の高校で野球部に所属する松田侑大さんは「プロの試合の雰囲気がすごい。実際に取り入れて吸収してみたいプレーがあった」と目を輝かせた。

 興奮したのは観客だけではない。球場をぐるっと1周歩き視察した楽天の立花陽三球団社長も「青森のファンから熱いものを感じた。こんなに喜んでいただけるとは思わなかった」と刺激を受けていた。来季の開催については「人工芝を整えていただいた自治体の協力があるから、試合をやりやすくなる。検証して、今後も全部の6県で試合をやりたい」と方針を明かした。

 プロ野球を青森でやる意味を、地元出身の細川は重く受け止めていた。自身の打席で大歓声を浴びたベテランは「まず仙台に楽天ができて、東北の野球熱が上がったし、高校野球のレベルも上がった。青森で開催されることで子供たちが大きな夢を持てるんじゃないか」と語った。東北6県すべてがクリムゾンレッドに染まった、記念すべき日となった。【高橋洋平】