試合前には、マシンも人も、予測不能の度肝を抜く“5階席弾”を放っていた。ホームランダービーでの6スイング目、打球がグングン伸びた。失速することなく落ちたのは右翼スタンド5階席。来るはずがない場所に飛んできた観客たちも、慌てて散り散りばらばらに落下地点から逃れた。

 トラックマンシステムの測定によると推定飛距離は133メートルにとどまったが、4階席に打った柳田が139メートルとつじつまが合わない。機械をも狂わせた1発。推定150メートルの特大弾は、柳田との対決に負けはしたものの、インパクトはキング級だった。球宴初出場で優勝した2年前、打撃投手を務めた阿部から試合前日13日に「投げようか?」と言葉を掛けられ即答。「阿部さんの球がよかった」と規格外の2発が生まれた。

 広島緒方監督から託されたセ界の4番。球宴を「真剣勝負」と言う一方で「オールスターにしかできないことがある」と見せる心も忘れずに、アーチで球宴に花を添えた。【栗田成芳】

 ▼筒香が16年第1戦から3試合連続本塁打。球宴の連続試合本塁打は97年第2戦~99年第1戦松井(巨人)の4試合が最長で、3試合以上続けたのは6人、7度目。この日の筒香は通算5試合目の出場で、3試合目からの3戦連発。これまで最も早く記録したのは出場6試合目からの79年第3戦柏原(日本ハム)で、筒香が「最速」の3戦連発だ。また、筒香は出場した5試合すべて打点をマーク。5試合連続打点は01年第1戦~02年第2戦松井、07年第2戦~10年第2戦山崎(楽天)に並ぶ記録で、初出場の試合から5試合連続打点は初めて。