これぞ千両役者だ。阪神福留孝介外野手(40)が、16年ぶりという最長ブランクの代打弾を放った。2-2の延長10回。無死一塁からチームトップの22犠打を誇る梅野が、バントを失敗した。その直後に「代打福留」がナゴヤドームに響き渡った。2ボールからの3球目、田島の142キロの狙い球を右中間スタンドへ運んだ。決勝の9号2ランは、16年ぶりの代打アーチとなった。

 「(梅野は)普段は一発で決めている。たまにはそういうこともある。(代打は)あまり気にならなかった。自分のできることをしようと思った」

 27日DeNA戦から3試合連続のベンチスタート。開幕から4番を張ってきたベテランに金本監督が、意図的に「夏休み」を与えた。21日の第1打席での本塁打を最後に17打席ノーヒットと少々お疲れ気味だったが、リフレッシュ完了の一撃を見せた。「千両役者ですね」と最高の賛辞を贈った金本監督も「休養が効いたんかな」と喜んだ。

 育ててもらった名古屋の街へ恩返し弾でもあった。福留は帰りのバスに乗り込む際に自ら切り出した。

 「(日本球界に)復帰してからナゴヤドーム初ホームランやろ? まさかここで出るとは思ってなかったけど。良かったんじゃないかな」

 中日でプロ野球人生をスタートさせて08年に米球界に飛び込んだ。13年に日本球界に復帰。そこからなぜかこの場所ではアーチがなかった。ナゴヤドームの本塁打は07年6月11日ロッテ戦以来、10年ぶり。劇的な一撃で名古屋のファンに衰えぬパワーを証明した。

 チームは後半戦初めての3連勝で、これで7月は12勝8敗。月間貯金3をノルマに掲げる金本監督は「明日勝ったら(貯金は)何個? 頑張りますわ」。勝負の夏はこれからが本番。虎には頼もしいキャプテンがいる。【桝井聡】

 ▼40歳の福留が延長10回に勝ち越しの代打本塁打。福留の代打本塁打は中日時代の01年8月14日巨人戦以来、16年ぶり2本目。代打本塁打のブランクとしては05年田中幸(日本ハム)13年小笠原(巨人)の「15年ぶり」を抜く最長ブランクとなった。また、阪神で40代の代打本塁打は若林、真弓2本、金本5本、桧山に次いで5人、10本目。プロ野球では今年の7月7日新井(広島)以来48本目の40代代打本塁打となったが、延長イニングに打ったのは福留が初めてだ。